しもえ

万引き家族のしもえのネタバレレビュー・内容・結末

万引き家族(2018年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

これはすごい映画。本当に衝撃を受けた。一言に日本の闇と言っても、様々な見方ができると思う。

リリーフランキーの役所では、ループから抜け出せない闇を感じた。
学がない自分でも”父親として”教えられる唯一のこと、それが万引き。祥太は途中から万引きへの抵抗を見せていたが、もし保護されなければ、凛がいなければ、凛を救おうとしなければ、祥太自身も治のような大人になりかねない。治は次の治を作りかねなかった、その意味でのループ。

信代は逆に自身の虐待の経験があるからこそ虐待から凛を守ろうとしたが、ラストのシーンでもあるように信代の母への(母となることへの)執着が伺えた。警察に子供たちから何と呼ばれたのかと質問されていた時のあのシーンの安藤サクラの演技は圧巻。母になりたくてもなれない人間にとってあれほど苦痛な空間はあるだろうか。

亜紀に関してはもう少し背景を描いてくれたら…とも思ったが、想像の余地があるのも映画を観た後の楽しみの一つかもしれない。
信じていたおばあちゃんが自分を愛していたのではなく利用していただけだった(かもしれない)と知った亜紀の心には何が残ったのか。最後にもう一度家に戻った時の目的は何だったのか。

そしてこれはこの映画の内容に直結する所ではないが、世に出ているニュース、マスコミに対する懐疑心さえも抱いた。
マスコミに都合よく描かれていた”失踪した少女の親への疑心”からの、”少女が感動の生還”。その背景には親の虐待があるにも関わらず、恐らくその報道は当初の親への懐疑からすり替わり感動的なものとして取り上げられるのであろう。

出来事の背景は当人たちにしかわからない。世に出てるニュースもマスコミの取り上げ方一つで左右される。海で出会った一見仲良さそうな家族が本当に家族かどうかなんて疑う人はいないが、表面だけで物事の真偽を見抜くことは決してできないことを痛感した。

そして何より、樹木希林の堂々たる演技。本当に素晴らしい、目が離せないような演技をする女優でした。
しもえ

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