このレビューはネタバレを含みます
こ わ い (最高の意味で)
大好きな映画で数年置きに何度か観ている。
場面場面で切り取ると心暖まる家族のシーンがたくさんあるのに、
この家族、血が繋がってないんです。
序盤から徐々に明らかになるこの事実。
この大前提があるせいでほっこりシーン観てるのに常に背中がヒヤッとするような新感覚。
貧困極まれり、だけど協力してなんとか生きている。でも家族じゃない。
厳しい現実を共に綺麗ごとなく
がむしゃらに生きている。でも家族じゃない。
子供を慈しみ、思いやりのある言葉をかけることもある。でも家族じゃない。
こわい(2度目)
自分に子供ができる前と子供ができた後で少しだけ見方が変わったのでそのあたりもここに残したい。
少し前の私はこう思いました。
最後のバスのシーン、えもいえぬ切ない気持ちになった。祥太は前を向いて良い。良いんだけど追っかけてくるリリーフランキーに同情してしまって。しょうもないおっさんなんだけど、なんとかみんなで幸せになれんかったかね…と考えさせられた。りんはただ可哀想で可哀想でね。
血の繋がらない家族だったけど、幸せな時が確かにあった。
血が繋がらなくても幸せで、血が繋がっていても不幸(虐待)なら家族って何?を考えさせられる映画だなあと。
こういうふうに生きる人たちがいたっていいじゃないか。と割と肯定的でした。
子供を産んだ今の私が思ったこと。
大人たち、結構自己中だね?
虐げられている子供達を大切にしてあげようという気持ちは確かにあったと思う。
でも可愛がるシーンをみて、割と独りよがりに感じる部分もあった。可愛がりたいときに可愛がる。親になりたい気持ちを満たす。血が繋がっていたら万引きしたって生きてくために必死な家族の姿で済んだんです(いや、済まんけど)けどこの家族はそこに責任が伴わないような気がしてね。
結構考えなしの行動もあるのよ。
誘拐してきた子日中出歩かせたりさ。
本気でやるなら遠くまで逃げて暮らそうぜ。金なかったかもしれんけど。
いや愛はあったと思う。ほっこりシーンは本当ジーンときちゃうの多かったもの。でもやっぱり子供は学校行かせた方が良いし、万引きさせるような環境のままってのは絶対よろしくないしさ。
楽しい、快い、を時には子供のために捨てるのが親だから。
どんなに楽しい生活でもあの家族の中じゃ男の子は髪も切りにいけなかったわけです。
と少し厳しめに評価していますがやっぱりこの家族(仮)嫌いになれないのです。
だってりんちゃんや祥太(あきも)にとって大切な時間は確かにあったんです。
最後がどうあれあの家族の形に救われていた時間は事実としてあるのです。
リリーフランキーの「教えられることが万引きしかなかった」は涙出るかと思った。あまりに純粋すぎて。
安藤さくらの警察での取り調べのシーン、圧巻。
最も親に近い愛情を持っていた人だったのかなあ。と思わずにはいられません。
後は樹木希林がりんちゃんの手に軟膏ぬったり、服つくってあげたり。
安藤さくらとりんちゃんのお風呂のシーンとか数え切れないくらい良いシーンがありますね。本当に血は繋がってないの?と言いたくなるような。奇妙です。
大人たちは不器用。もっと他にやり方あったのでは?と思っちゃうけど野暮なんだろうね。
それができてたらあの暮らししてないよね。
少し話が逸れますが、
映画の「joker」観た時に
貧困は抜け出せない、こうすれば良い、ああすれば良いのにという意見は恵まれていることの証明だなと思ったんです。貧しいとは良い方向に行くための手札がないということ。
この家族観てたら手札無かったろうなーと思うんですねぇ。
だから仕方なかった。でも心暖まる時間があったという事実だけは確かにあります。
バスの中で、祥太が言ったセリフは「とうちゃん」だそうです。(わからなくてググった)
最後りんがベランダからのぞいて何か言おうとしてるような感じで終わるんですけど、これが「かあちゃん」だったら出来すぎですかね…
結局疑似家族のままでいられなかったけど、2人の心に残ったものはあるんだろうな。
でもりんちゃんだけは可哀想すぎる。今すぐうちの子になってくれと思っている。
あとあまり触れられなかったけど松岡茉優ちゃんが良かった。ちょっと幸薄い役が本当にお上手なんです。(「劇場」も良かった…)
こんなところで記録を終えます。
また数年後に観ていることでしょう。