たく

万引き家族のたくのレビュー・感想・評価

万引き家族(2018年製作の映画)
4.9
2回観ての感想。

是枝監督の作品は季節と共に流れる点で、小津安二郎的とよく言われるそうですが、今回は、1年の季節の流れと、世代の流れに包まれた映画になってると思いました。

季節の流れは観た通りで。
世代の流れは
・樹木希林さん演じるお婆ちゃんの世代
・リリーさん、安藤さん演じる、親の世代
・松岡ちゃん、池松くんの、20代くらいの世代
・二人の子役演じる、これからの世代

冒頭の「親にいらないって言われた子はあんな風にならないよねえ」という安藤さんとリリーさんの会話から「ああ、この二人も幼少期に同じ経験をして、出会ったんだ。」と思う。
この出会いが松岡ちゃんと池松くんの世代で描かれていて、この二人も同じように痛みを理解し合う二人として出会う。(ドキュメンタリーではその後にデートしてる二人も撮影されていて、その後を感じさせる)

リリーさんが男の子に自分の本名を名付けた理由も、彼が小さい頃に親に愛されなかったか何かで、「起こらなかった子供の頃自分」を彼に投影して、自分が親として愛情を注ごうとすることで、自分への昇華にもなっているのだと思いました。
だから、2回目でそこに気づき、バスを追いかけるリリーさんに号泣してしまいました。
男の子を恋しく思い名前を呼んで追いかけるのと共に、自分の過去にいなかった、愛された自分自身をすがるように追いかける、そんな姿に見えて。

「サヤカ」と源氏名をつける松岡ちゃんの投影は、プラスではなくマイナスのイメージ。

そこから、きっとお婆ちゃんも、何か愛を失っていたことで、この血の繋がっていない「家族」を自分の家に居座って貰っていたのかな。と考えさせられる。

タイトルの「万引き家族」も、万引きして生計を立てる家族、ではなくて。「他の家族から、万引きしてきた家族」なのだと思います。


その他にも、
細野さんの音楽のピアノ電車とか(エンドロールは用意したものは使われなかったらしい。
ワークシェアの話とか
生と死的な話とか
過去作品とのリンク感とか
細かいセリフの影響とか

どれだけ時間があっても語りつくせない映画だなと思います。

「語る」というのは、「ここが、こうなんだよ」ではなく、「ここって、こうなのかな」という正解のない話と、観た人それぞれがどう思ったか、感じたかを話すこと。
で、是枝監督の映画は、その行間を観た人に委ねるとこが、本当にいいとこだと思います。

小説版を読んで、また違った見え方を味わいたいと思っております。
たく

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