がく

万引き家族のがくのレビュー・感想・評価

万引き家族(2018年製作の映画)
5.0
開始早々カンヌ映画祭パルム・ドール受賞と言うテロップが出た。嫌でも期待が高まる演出であるが、それに応える渾身の作であった。
リリーフランキーは外に放り出されている小さな女の子を拾う。名前はりん。彼女を加えた6人の家族は、万引きとおばあちゃんの年金で暮らしていた。それぞれが偽物の家族である一家。しかし、ある事件が起きて…
前半はいつもの一家の日常が描かれる。とはいえ、日常と言っても万引きしたり、風俗で働いたり、元夫の家族にお金を貰ったり、かなり変わった暮らしをしている。家族は夜になると集まってカップ麺や鍋料理を食す。昼間は変わった生活の一家も、この時は憧れるほどの温かみを見せる。
後半はあることが起こったせいで、家族がバラバラになっていく。警察によって真実が告げられ、一家は動揺する。しかし、それは本当の事実なのだろうか。警察が社会の規範に沿って作った勝手な事実ではないのか。犯罪で繋がった絆は本当の絆ではないのか。法を破った落ち度のある一家は何も言い返せない。
本作にはハッとするセリフも多い。年金を慰謝料だというおばあちゃん。死んだゆりのおばあちゃんのことを「なら、忘れちゃいな」と言う息子。そして、「妹にはさせるなよ」という駄菓子屋の主人。もしかしたら、駄菓子屋の主人こそが一家のことをよく理解していたのかもしれない。
暮らしの中の「逮捕されてもお釣りが来る」幸せと、その近くにある危機が両方描かれた作品。
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