なちゅん

万引き家族のなちゅんのレビュー・感想・評価

万引き家族(2018年製作の映画)
3.9
是枝裕和という人は、「真実」のプロモーションでテレビでインタビューを受けていたのを見たときに「苦手だ」と思った。今でもそれは変わらない。彼の作る作品がどれだけ良くたって、多分ずっと苦手だと思う。

とはいえ、この重く切ない映画を見て、何も感じないわけにはいかない。家族ってなんなんだ。血縁が人を家族にするのでもないけれど、過ごす時間が家族を作るのかと言えばそれも違う気がする。愛情と信頼があれば家族になれるわけじゃない。血が繋がっていたって信頼なんて脆く崩れる。
でもこの映画で「家族」が崩れたのは、容赦なく押し付けられる一般的な価値観によってであって、内部崩壊したんじゃない。万引きや車上荒らしに手を染めて、そんな暮らしはとても擁護できるものではなかったけれど、彼らの生き様は一方的に否定されてもいけないように思う。あんなに幸せそうな笑顔でいっぱいだったじゃないか。

善も悪も、いつだってグラデーションになっていて、一つの物差しで測れるものではない。誰かを断罪することばかりな社会で、忘れたくない。(お利口じゃないからすぐに自分のものさしでの悪を悪だと言ってしまうけど。)
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