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彼が愛したケーキ職人の708のネタバレレビュー・内容・結末

彼が愛したケーキ職人(2017年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

出てくるお菓子は甘くておいしそうなんだけど、じんわりと切ない映画でした。BLだのゲイだのという狭いジャンルで括るのではなく、もっと広義な恋愛ものとして捉えられた作品でした。

イスラエルから月一でドイツのベルリンへ仕事で来ていた、オーレンという男と恋仲になったケーキ職人トーマス。突然連絡が取れなくなり、事故で亡くなったことを知りショックを受けます。

一方、オーレンの妻アナトも夫の事故死でショックを受けながらも、自身が営んでいるカフェをなんとか切り盛りして、幼い息子と暮らしています。そんなある日、トーマスがイスラエルのアナトの店を訪れて、自分の正体を隠しながら働くようになります。

今回初めて知ったのですが、イスラエルでは旧約聖書に基づいたユダヤ教の食事規制の「コシェル」という戒律があって、非ユダヤ人が仕事でオーブンを使うことは禁止されているそうです。ですが、ドイツ人のトーマスのケーキは人気だったため、アナトの店の売り上げにも貢献するようになったので、アナトの協力の下でその戒律をなんとか切り抜けて、トーマスはケーキを焼きます。

そんな中、「好きな人ができたから別れたい」とオーレンから生前告げられていたアナトは、女の勘でその相手がトーマスなんじゃないかと薄っすら気づきます。

トーマスもアナトも、オーレンがいなくなって空虚になった心や喪失感、行き場のない気持ちをオーレンを知る者同士で、埋めながらどことなくバランスを取っているような、恋愛のようで恋愛ではない不思議な関係性になっていたけれど、オーレンの相手がトーマスだとハッキリと判明した途端、その関係は崩れてトーマスがドイツに帰国させられてしまいます。トーマスの気持ちもアナトの気持ちもわかるからこそ、なんとも切ないです。

でも、ラストでアナトがドイツのトーマスの店の前に辿り着いて終わるシーンに、微かな希望が見えたので、ちょっと救われました。まぁ、男女の恋愛関係にはならないでしょうけどね。
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