アリスinムビチケ図鑑

天才作家の妻 -40年目の真実-のアリスinムビチケ図鑑のレビュー・感想・評価

4.0
一人の女流作家を目指していた才能溢れる女性と、その夫の夫婦の愛の形の物語です。


男性社会に女性が進出するのを許さない風潮のある時代背景がありました。

どんなに優秀でも、女性だからと言ってまともには取り上げて貰えず、
出版をするまで漕ぎ着けても鳴かず飛ばずで本を母校に飾って貰えるのが関の山。
手に取ってもらう事すら無く、
多くの才能ある女性達が作家になる事を断念して来ました。

グレン・クローズ演じるジョーンもその1人です。

理知的で文才のある彼女は大学に在学中から周囲にそれを認められ、
そこで教鞭を執っていた(後に夫となる)ジョゼフからも一目を置かれ可愛がられていました。

妻子あると知りつつもジョゼフに心を奪われてしまうジョーンは、
時代の流れに抗うこと無く作家の夢を手放してしまいます。
代わりに、ジョゼフ自身と彼を作家にすると言う夢を手にします。

そんなジョーンはジョゼフの成功の為裏方に徹し、
"良き妻"と言う形でジョゼフの"ノーベル文学賞"の受賞式に同席します。

ジョゼフについての本を書くと言う程で近寄って来た記者に誘発される様に、
ジョーンは改めて自分を見つめ直し始めるのでした…。


どこの国も同じですが、
何故、何時から女性が卑下され社会進出をする事を許されない世界になったのかと、毎回思います。
何故、能力差を勝手に位置付ける等の勘違いが生まれたのかが謎です🤔

相対的に向き不向きは有るとは思うんですけど、それも個体差によるものが大きいでしょう。

今でこそ、大分見直されて平等に近付いては来ていると思いますが、
この当時は才能をも諦めなければいけない風潮が蔓延していた頃ですし、
ジョーンの決断は愛有ってこそとは言え、どんなに辛かった事だろうと胸中察します。

きっかけはどうあれ、自分を見つめ直す機会を得て、
人生をただ流されるのでは無く、
自分の意思で選択し、歩む事を取り戻すのは素晴らしい事だと思います。

それとは逆に、夫のジョゼフの妻に対する扱いや感謝の無さには呆れ、怒りすらも憶えますが、
元々の性格に加えて、時代背景や、ジョーンに甘やかされる等の要素もダメ男を作り上げた要因だったんだと思います。

甘やかし過ぎはダメ男を作ってしまいます。
支える程度で丁度良い。
何から何までしてあげては、自力でする事をしなくなり、
感謝の気持ちすら忘れてしまいます。

ジョーンの自己を見つめ取り戻そうとする行為は、
どんな結果が待ち受けていたとしても、
2人にとって必要な出来事で、それは幸せに繋がる大事な一歩だったんだと思います。

それにしても、今回のグレン・クローズの演技力の高さには目を奪われるものがあります。

感情の起伏を時には静かに、時には荒々しく、表情だけでは無く身体全体からもヒシヒシと伝えて来る丁寧な演技に、
ベテランの底力の凄さを感じます。


映画の中では夫に受賞させる役割りでしたが、
今回のアカデミー賞では、是非主演女優賞をグレン・クローズ本人に取って欲しいと思いました😊