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アヴァのakrutmのレビュー・感想・評価

アヴァ(2017年製作の映画)
3.9
13歳の少女アヴァのひと夏の成長譚を描いた、レア・ミシウス監督の長編デビュー作となるドラマ映画。

思春期の少女の成長物語と聞いて普通に想像するような内容といくつかの点で異なるのがこの映画の特徴であり、レア・ミシウス監督の非凡な才能であろう。主人公のアヴァは網膜色素変性症という難病にかかっていて、近いうちに夜盲となり、いずれ失明してしまうという設定が、単なる思春期特有の不安定さを超えて、アヴァの精神的不安定さを強調する役割を上手く果たしている。また冒頭から、燦々と輝く真夏のビーチとそこを走り回る黒い犬というコントラストでアヴァの引き裂かれた精神状態を比喩的に象徴するなど、映像表現も優れている。

本映画で最も凄いのは、前半と後半で異なる映画を見ているかのような変化にも関わらず、全体として統一の取れた作品に仕上げている点である。あまり深く考えずに本作を鑑賞すると、前半と後半で整合性がほとんど取れていないように見えるだろう。でも、それはレア・ミシウス監督の巧妙な罠なのかもしれない。前半と後半の変わり目にアヴァが日記を朗読するシーンが挿入されていることを考えると、後半はアヴァが妄想する架空世界という解釈も可能なのである。

このような変わった特徴がありながらも、思春期特有の親に対する嫌悪感を際立たせるような性的に緩い母親という設定や、それにも関わらず抑えられない少女の性に対する興味や目覚めなど、よくある成長譚のプロットもきちんと融合されている。成長譚でありながらロマに対する差別さえも表現するという貪欲な姿勢も素晴らしい。

撮影当時17歳であったノエ・アヴィタが幼さと大人びた雰囲気が同居した13歳の主人公アヴァを演じているが、デビュー作にも関わらず彼女の堂々とした演技は称賛レベルである。一方、アヴァが恋するロマの男性ジュアンに対してリアリティにこだわったレア・ミシウス監督が起用したのは、実際にロマであるジュアン・カノという素人俳優である。そして何と言っても、『女っ気なし』同様に、ロール・カラミーの性的に緩い女性の演技が秀逸。ちなみに、母親が開脚してヘアだけでなく性器まで露出するシーンがあるが、これはロール・カラミーのアイデアだそうである。アヴァが近所の子どもたちに母親のまぐわいを見せるシーンは、意地悪くも微笑ましかった。
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