ナチスによるホロコーストの時代を生き抜いた3人のユダヤ人のインタビューと再現ドラマ。
ホロコースト時代のドイツに潜伏したユダヤ人生存者の証言をもとに、再現ドラマのような要領で物語が展開される。その内容はまさに事実は小説より奇なり、といいたいところではあるが、基本潜伏場面が多く、映画的と言えるスリルの種類は多くない。その命懸けの潜伏下という環境の中で三者三様の表現方法を手にしているのは興味深く、ドラマ化したことでその証言を形として記憶にも記録にも残るものにしている。
ただ、再現ドラマ→証言インタビュー→実際の当時の映像の繰り返しは「仰天ニュース」のような構成で映画としてどうなのか…とは思わざるを得ない。「Thin Blue Line」のように新事実を検証するドキュメンタリーとしての社会的存在意義を強く放つかというとそこまででもないため、なにかどっちつかずで没入感の薄れるものになってしまっている。
とはいえ、終盤のそれまでドイツ人になりすましてユダヤの人格を手放さざるを得なかった証言者が再びそのアイデンティティを取り戻すソ連兵との緊迫感あふれるエピソードはとてもシネマティックで胸を打った。
ところで、タイトルの「ヒトラーを欺く」要素は一切内容にない。他の作品も含め、原題にはない「ヒトラー」をタイトルに組み込みがちな邦題、ヒトラーをキャッチーなものに捉えているみたいであまり良くないと感じてしまう。