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魔法にかけられて2のRenのレビュー・感想・評価

魔法にかけられて2(2022年製作の映画)
1.5
さすがに難しすぎる。前作が好きだから残念とかのレベルではなく、前提の理解がまずできなくて、その後もずーっと「この人たち何やってるの?」状態だった。そこを何となくクリアして今作を楽しめて賛辞を送れる人の汲み取り能力が羨ましい...!

まずジゼル(エイミー・アダムス)の様子が序盤からおかしい。前作の直後から始まるならまだしも、14年も経ってここまで現実世界の生活や思想に順応できていないのは、もはや前作のラストの否定ですらある。この続編をやりたいがためのキャラクターの捻じ曲げが意味不明で、まずここを乗り越えられなかった。前作を観ているのなら(特にジゼルが好きなら)絶対に出る疑問のはずなのに、指摘している人が思っているより少ないのが自分としてはかなり謎。細かいことは気にしない!と言う人もいそうだけど、それが物語の土台なのだから細かいどころか一番重要じゃないの....?

前作では「憧れである一方、現実と共存できるもの」として用いられたアニメーション(魔法)世界が、今作では「憧れではあるが、現実の置き換えにはなり得ないもの」として描かれており、その反転がそのまま原題の反転になっている。
「現実世界で夢見ることの可能性」については前作で掘り下げが終わっているので同じことをやっても仕方ないのは分かるのだけど、そのための細部のチューニングの詰めが甘いと言わざるを得ない。具体的には、「毎日の電車通勤から抜け出したいと感じていたロバート(パトリック・デンプシー)が変化するための、それと対になるエピソードがよく分からない」「脇役の影が薄くて誰のことも好きになれない・応援できない」などが挙げられます。前作で、継母イコール悪役という古典のおとぎ話へカウンターを食らわせるような物語にせっかくしたのに、結局今作では継母がヴィランになるのもよく分からず。

今いる場所と一緒にいる人を大切にしよう、といったメッセージに集約していくけど、それって前作のラストと景色が変わってなくない....?『シンデレラⅡ』とか過去の上手くいった続編を知らない人たちが撮ったのかな?「前作のみんなの選択は間違ってなかったです」以上のことを言っているようにはどうしても見えなかったし、だとしたらなぜ今作が作られたのだろうと、永遠にこの映画の見方を見失ってしまった。

だとすれば珍作なら珍作なりにエンタメとしては振り切るべきなのに、その点に関しても既視感とオマージュと役者続投の話題性ばかりで面白くなかった。「意味不明だけど、なんか面白くはあったよね」とすらならない。続編としても駄目だし、一本の映画としても駄目というなんとも擁護し難いところに着地してしまった映画。脚本の推敲が足りないまま撮影しちゃったのかな。

一応色々な人のレビューをざっと読んだところ、ジゼルが/エイミー・アダムスがまた見られて良かった!というようにキャラクターや俳優=推しを拝む感覚で今作を楽しんでいる人が多かった印象。別にいいけど、それだけを基準に高評価する人が大多数になったら映画文化はどんどん死んでいく。その成れの果てが『~ ノー・ウェイ・ホーム』の大ヒット。ただでさえディズニー映画は配信スルーにシフトして良作も駄作もますます量産されていくのだろうから、それだけは避けたいところ....。

その他、
○ 魔法を信じる母親と現実主義者の娘構造は『ピーターパン2 ~』で掘り下げ済みなので、開幕から既視感。
○ アニメーションと現実を繋ぐトンネルって場所変わるんだ。前作はNYの下水で今作は家の前の井戸。
○ 過去作オマージュが大量だけど、分かりやすいのは『シンデレラ』『眠れる森の美女』『美女と野獣』『塔の上のラプンツェル』辺り。
○ 中盤以降のジゼルのキャラクターは、前作でも光っていたエイミー・アダムスのオーバーアクトが映える設定になっていて良かった。
○ 原題を直訳すると「魔法を解かれて」みたいな感じになるのだけど、そういう方向で邦題も付けたらよかったのでは。

その他連想作品
『ワンダヴィジョン』
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