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クリード 炎の宿敵のdm10foreverのレビュー・感想・評価

クリード 炎の宿敵(2018年製作の映画)
4.3
【時代】

キターーーーーー(≧◇≦)
これは今年のベストクラスの1本ですわ。目頭、熱!

30年もの長い間、とても深い呪縛に囚われ続けた男たち。
ある者は父を殺され、またある者はたった1試合に負けただけで全てを失った。
これは単なるボクシング映画ではなく「あの時」に男たちが背負った宿命を昇華するための決して避けて通ることのできない必然の戦い。

実は前作は試写会で観させてもらったのですが、クリードの戦う理由に100%の共感が持てないまま映画が終わってしまい、乗り切れないままでいたのです。しかし、いざ公開されるや否や世間では大絶賛の嵐。きっと僕に合わなかっただけなんだろう・・・と、DVDでの再鑑賞すらスルーしていました。本当は大好物なシリーズだし、ひょっとしたらもう一回観れば違った見方が出来るのかもな・・と思いつつ。

で、そんな感じのシリーズの第2作を何故公開初日に観に行ったのか?
自分でもうまく説明出来ないのですが、やっぱり「ドラゴ」の存在は大きいと思います。
初代シリーズは確かに「ロッキーとアポロの友情物語」という部分も大きかったと思いますが、アポロがドラゴに敗れ「戦死」するというショッキングな展開に愕然とし、同時にロッキーの中に「アポロ」の存在が永遠になっていく瞬間でもあったと思うんですね。
その大きなポイントとなったのがドラゴとの一戦ですし、シリーズ全体を通してみても、ロッキーのその後を左右するターニングポイントになった一戦だったと思います。
そして、その息子とクリードが対戦するという設定を知った時に漠然と思ったんです。
(僕の求める「クリードの戦う理由」がここにあるんじゃないか)と。
それは単純に「敵討ち」とか「復讐」とかそういう事ではありません。
父と同じ道を歩んでいく上で、父と同じ時代を生きたロッキーに教えを乞うだけでは全てはわからない。答えは自分自身でリングの上で見つけるしかないのだと。そしてその相手は『ドラゴ』しかいないと。

最初はまんまと相手の挑発に乗り、「負けるわけがない」と感情の赴くままに試合を受けようとするクリードですが思うようにはいきません。
そして、そこで得る様々な葛藤や自身の環境の変化、本当に守るべきもの、お前が戦う理由はなんだ?
改めて向き合う自分自身。王者でいることを恐れている自分。守らなければいけない家族。
戦うのは父の為?母の為?自分の為?
目を覚ましたクリードを待っていたのはロッキーの超絶スパルタトレーニングだった(ボクサーの虎の穴)。
でも、この辺から自分がクリードに求めていたものが見え始めた。
そうなんだよ、ロッキーのボクシングを継ぐのなら、そのハングリーさが欲しかったんだよと。血反吐を吐くまでなんていう精神論は今は昔かもしれない。だけど、自分を超えていくのは自分自身なんだという事を初めてクリードに見た。そして泣けた。

そして最終決戦・・・。
ただただ呆然。そして涙。
それは単に試合シーンのクオリティが高いという事だけではなく、イワン・ドラゴの憎たらしいくらいの存在感や、クリードを信じて支え続けるロッキーの姿、そしてここぞで流れるあのテーマ・・・。全てが完璧に融合した贅沢な時間。
先日の「ボヘミアン・ラプソディ」のラスト21分にも引けを取らない圧倒的なシーンです。
ここだけでも鑑賞料金のもとが取れるくらい観る価値あり。


で、同時にこの映画にググっと来たところ。
それはドラゴ親子にとっての30年があまりに壮絶だったという事。
30年前にドラゴがアポロを殺し、クリードから父親を奪ったが、それはドラゴも同じことで、直後のロッキーとの試合に負けたドラゴは国も威厳も家族も全てを失っていた。失意の中で彼がもう一度這い上がるために出来ること、それは「戦うこと」だけだった。
そしてその全てを叩きこまれたヴィクターはまさに怪物のようなファイター。
しかし、彼の力の源は「怒り」と「憎しみ」。それが物語が進むにれ徐々に虚しく刺さる。
親子を待つ残酷なラストには、クリードに対する感情とは明らかに違う感情を向けていた。何故か100%憎めない。彼らにとってのこの30年間を考えたら、クリード:ロッキーを倒すためだけに費やしてきた時間を考えたら・・・
この物語の二重構造は良く出来ていたと思う。決して重くなりすぎず、でもそれぞれに「手に入れなければならないもの」があって、でもそれを手に入れることが出来るのは勝った者だけという現実。

これはきっと万人受けするでしょう。
何故、前作がハマらなかったのか・・・。あえて今作を見た今なら第1作に対する自分の答えがキチンと出せるかもしれない。
改めてもう一度観てみよう。ありがとうクリード。
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