滝和也

クリード 炎の宿敵の滝和也のレビュー・感想・評価

クリード 炎の宿敵(2018年製作の映画)
4.3
諦めたら何者でも
なくなるんだ!

復讐の炎を燃やす親子、
そして
熱き友情の絆で結ばれし
師弟が今、再びのリング
で相見える!

「クリード 炎の宿敵」

号泣必至…。ファーストシーンから泣けて泣けて。もう眼球が萎むかと。

冷静では、いられない。そこにあの男がいるのだから。嘗てモスクワで闘ったあの男、イワン・ドラゴ。ドルフ・ラングレン。スタローンをスライと呼び、ロッキーⅣで人生が変わった男。そしてエクスペンダブルズでの復活迄は低迷期を過ごした男。正にそれと被るような設定、ドラマを持って、スタローンと相見えるのだから。

ロッキーの助けからアドニスは遂にチャンプとなった。だがウクライナから刺客が現れる、ドラゴ親子。嘗て父アポロを死に追いやり、ロッキーにモスクワで1敗地にまみれたドラゴの息子がチャレンジャーとして名乗りを上げる。ロッキーの反対を押し切り、敵討ちのリングに向かうアドニスだが…。

再度言うが、冷静では入られなかった。冷静に批評などすることもできない。どのシーンが泣いていなかったかわからないほど、涙が自然と出てしまう。

あぁロッキーが大好きだったんだなと。

ロッキーⅣは酷評された。だが私には辛い若い頃に勇気を与えてくれた作品だったんだなと気付いた。大事な作品だったのだ。たちあがる勇気を与えてくれたのだと。その作品と完全に繋がり、再び立ち上がる勇気を与えてくれる作品だった。

アドニスが何者であるか、証明した前作から、今作では、自分が何者であるかを証明し続ける難しさをイメージした。勝つことで、自らを証明しようとするドラゴ親子。彼らを捨てた国、世間、母、妻に対しても。ロッキーは言う、奴等は強い、当然だ。戦う理由があるから。お前には?そうボクシングと言う競技は見ず知らずの人と殴り合うのだ。テッサが歌う歌詞は言う、金ではないのと。そんなものは副産物なのだ。リングに立つには理由がいる。今作ではそこをはっきりと言わないが丁寧に積み重ねる。父親のせいにするな!アドニスの義母は言う。これはお前の戦いなのだと。父となり、夫であり、アポロの息子であるアドニス自身の存在意義と意味をかけた戦い。存在し続けるための戦いなのだ。これが刺さる。痛いほど心に刺さる。私には凄まじい説得力をもってラストバトルへ持って行かれた。

ロッキーの姿はもう、在りし日のミッキーだ。弱くなり、墓のエイドリアンに寂しさを訴える日々。悲しいほど単純で朴訥な男はもうそこにいない。自らの経験から恩讐を超えた先に存在する聖人、ロッキーがそこにいる。話す言葉全てに重みがあり、金言である存在。若き世代に遺産を受け継ごうとする彼に感動を覚えない老いたものはいないだろう。更に今のスタローンを重ねて見えるのだ。

この作品はそうスタローンを、ロッキーシリーズを全てを重ねて見てしまう。あの方がまさか登場するとは驚きだ…。しかも重要な役で。アドニスの妻ビアンカは新世代のエイドリアンだ。自ら夢を持ち、夫も支える。自ら先頭に立つ姿は時代を感じる。控えめな強さを持つエイドリアンとその強さは同じだ。地味な所だがアポロのトレーナー、デュークの息子も登場する。ロシアの大地でロッキーを鍛えたのも彼だった…。

アドニスはロッキーよりも繊細で線が細い。単純で朴訥だったロッキーよりも、複雑で弱い。だがその弱さを強さに変える演出での演技はマイケル・B・ジョーダンの巧さが光る。

そしてそれを支える円熟のスタローン、ドルフ・ラングレンの旧世代。人生を背負った哀愁がまさに背中からにじみ出ている。そして演出の妙。ロッキーⅣのドラゴそっくりのベタ足で戦うパワーファイターの息子、アポロとロッキーの良さを兼ね備えるアドニス。そのラストファイトシーンの二人のセリフ、かける言葉に注目して欲しい。思わず二人がお互いを大事にしていると分かるシーンがあり、ニヤリとさせられる。

全て見終わった後、ロッキーザファイナルのセリフが思い起こされる。

「人生ほど重いパンチはない。だが何度もこらえて前に進むことが大事なんだ。」

正にそれを体現するストーリーであり、スタローンやラングレンの人生を重ねて見てしまう。何度も危機に陥った二人が役者人生をかけ、新世代につなごうとするその姿はシリーズを見、同じ時代を生きている私達には必ず心に刺さるはずだ。

やはりスタローンは最高だ…(T_T)
滝和也

滝和也