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ガチ星のhatraのレビュー・感想・評価

ガチ星(2018年製作の映画)
3.4
江口カン監督の『サンクチュアリ』がすごく良くて気になってたので視聴。
一言で表せば競輪版『ピンポン』×『ザ・ノンフィクション』。
この監督が「何についてどう語りたい人なのか」という作家性に理解を深められた気がする。

溜めて溜めて溜めて跳ねる、割と我慢を求められる映画。
主人公がクズすぎるんだけども、色んな機会や兆しがあってもとことん変わることができない。
そんな姿に「実際何十年もクズな人間はそう簡単に変われないか」という冷ややかなリアリティが溢れている。
努力しない人間ほど「努力」という言葉を好んで使ったり、尺度を見誤っていて主観的っていう描き方が生々しい。
しかし、だからこその熱い展開もある。
言葉少ないながら決定的に繋がりが見えるようなシーンの数々が男臭くて好き。
この手の映画にしては視点と構成が珍しくて面白かった。

ただ「何故競輪じゃなければいけないか?」という題材への説得力や、「競輪舐めてないか?」という問いに返せる本質的な発見など、最後まで具体的な芯が見えなかったのが残念。あらゆるものが舞台装置に終始してしまった印象。
競技面でも主人公自身のポテンシャルが見えづらいし、競輪についての説明もほぼない為、後半は「誰にとってどういう局面なのか」というのが掴みづらかった。

個人的には好きな作品だったが、ドラマの尺でじっくり語る方が得意な監督という気がする。
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