一人旅

ソルジャー・ボーイの一人旅のレビュー・感想・評価

ソルジャー・ボーイ(1972年製作の映画)
3.0
TSUTAYA発掘良品よりレンタル。
リチャード・コンプトン監督作。

カリフォルニアを目指して車を走らせる四人のベトナム帰還兵の日常を描いたドラマ。
いわゆる“ベトナム帰還兵物”の中の一作。ベトナムから帰還した四人だが、母国アメリカに彼らの居場所はない。遠いベトナムで敵と戦っている間に地元の同級生は結婚し、妹夫婦には子どもが産まれている。出会った女に「今まで何してたの?」と尋ねられても「人を殺していただけだ」と答えるしかない。朝鮮戦争を経験した老人が帰還兵たちの存在意義を真っ向から否定してしまう場面にも心が痛む。
ベトナムに行かなかった人間は自分自身の人生を確実に次のステップへ進めていたというのに、四人にはそうするための時間すらなかった。ベトナムから帰還した四人が痛感する社会からの疎外感がひしひしと伝わってくる。そして悲しいことに、そうした疎外感が積み重なり、やがて社会に対する怒りや憎しみとして噴出してしまうのだ。
途中までは四人に対して同情的余地があったが、終盤のクライマックスで四人が取る行動は完全に常軌を逸している。ベトナムの血生臭い戦場の風景が、母国アメリカの田舎町にそのまま再現されたかのように壮絶で孤独な戦い。国家のために戦い続けた四人が母国で辿る過酷な運命に、同情こそできないが虚しさを感じてしまう。
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