レイモンド・ブリッグスならではの柔らかな筆致で描かれる絵の幸福感たるや。こういう観賞後に温かい気持ちになれる映画もやはりいいな、と。
2020年は、第二次世界大戦終結から75年の節目の年となる。戦争経験を語ることができる人々が少なくなっていく今、どのようにしてこの負の遺産を語り継いでいくかは喫緊の大きな課題だろう。小説や映画、写真など様々な媒体で戦争の記憶を遺していく活動がされているが、どうしても戦争の悲惨さや人殺しが正当化される異常性が強調されがちである。そんな中で、この「エセルとアーネスト」や日本のアニメーション映画「この世界の片隅に」のような日常の延長線上に戦争があることを教えてくれる作品は貴重だと思う。