かたゆき

マローボーン家の掟のかたゆきのレビュー・感想・評価

マローボーン家の掟(2017年製作の映画)
4.0
「成人になるまでは屋敷を離れてはならない」「鏡を覗いてはならない」「屋根裏部屋に近づいてはならない」「血で汚された箱に触れてはならない」「“何か”に見つかったら砦に避難しなくてはならない」――。
自らに課した、そんな五つの掟を守りながら、慎ましやかに暮らしているマローボーン家の四人兄妹。
イギリスからアメリカ郊外の山の中に佇む古びた洋館に越してきた彼らは極力外部との接触を断ち、恐ろしい何かから身を隠すように静かに暮らしていた。
そんな折、持ち上がった館の相続問題。期日までに親権者である母親のサインがなければ、兄妹は離れ離れになってしまう。
だが、彼らの母親はアメリカへの旅路で体力を使い果たし、帰らぬ人になっていた。
何とかして事態を打開しようともがく兄妹たち。同じころ、末の弟が館の中で不穏な何かを目にするようになり……。
果たしてこの館に隠された驚くべき真実とは?どうして彼らは鏡を覗いてはならないのか?そして、兄妹は無事に成人になる日を迎えることが出来るのか?
古びた洋館でひっそりと暮らすマローボーン家の兄妹を襲う、そんな数々の不穏な出来事をダークに描いたゴシック・ホラー。

制作を務めるのは同じくゴシック・ホラーの傑作『永遠のこどもたち』を撮った、J・A・バヨナ。
いかにも彼らしい不穏な空気に満ちた、なかなか見応えのある作品に仕上がっておりました。
取り敢えず、「何か裏がある」というのは冒頭から分かるのですが、観客を導くミスリードの仕方が抜群に巧く、最後まで全く気が抜けません。
ことの真相は途中で半分くらいまでは予想できるものの、完全には分かりませんでした。
この屋根裏の〇〇は〇〇で実は〇〇ていたというのは何とか予想できたものの、〇〇たちは実は〇〇の〇〇だったとは……って決定的なネタバレを避けるあまりもはや検閲文書みたいになってしまいましたが(笑)。
それはさておき、普通にホラー映画としてかなり高い水準に達しているのが素直に素晴らしい。
館の中に居る何かが徐々に兄妹たちを追い詰めていく描写の禍々しさといったらない。
最後までずっと不安感が拭い切れないのはいいホラーの証ですね。

そして、最後は切なく哀しい余韻を残してくれるのもこの監督ならでは。
なかなか完成度の高いゴシック・ホラーの良品でありました。
かたゆき

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