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ゴッズ・オウン・カントリーのoggyのネタバレレビュー・内容・結末

4.1

このレビューはネタバレを含みます

寒々しいヨークシャーの風景に、生々しいセックス、動物の生と死、親の介護。正直に言えば、目を背けたくなるようなシーンもあった。でも、これがジョニーの現実で、鬱憤で、彼とゲオルゲを繋ぐもので、人生なのだろう。

鑑賞しながら、もやもや、やりきれなさ、退屈感等々のなんとも言えない感情があったが、ラストの父親との会話やゲオルゲとの再会で、それらが一気に意味を持つ感覚があった。
得難いものがあるとして、一度それを諦めてしまえれば、あとは簡単になる。自分の居場所はクソ溜めだと自虐し、ただ現実を知っているのだと可能性を切り捨てれば、不確実な未来への努力をしないことの免罪符となるから。
だけどジョニーは、ゲオルゲと出会って、変わろうとしている、変わりたいんだと言えるようになった。奥深い部分に押さえつけて、決して見ないようにしていた希望を、認めることができた。
ジョニーだけではなく、昔ながらの頑固な父親も、そうだ。決して失ってはいけないものと他の大切なものを天秤にかけ、その答えこそが、「それがお前にとっての幸せなのか」というあの言葉に凝縮されている。
こう考えると、閉ざされた空間で、死んだ国、失った農場を見てきたゲオルゲだからこそ、変わっていくものと守るべきものを知っていたのかなと思う。

また、初めは、ゲオルゲはジョニーの救世主という印象が強かった。とはいえ、彼には彼の影がある。移民で、収まるべき所がなく、差別も受ける。そんな中で出会ったジョニーに、彼は惹かれた。その意味を考えたいけれど、今はまだ消化不良。この点は、いつか自分なりに考えをまとめることができればいい。

ただのラブストーリーではなく、自分の生きる姿勢を考えさせる作品。もがこうと諦めようと、生きていくのは自分自身であり、「これで良いのか」と問うことの重要性を痛感した。見ることができて本当に良かった。
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