すず

ゴッズ・オウン・カントリーのすずのレビュー・感想・評価

3.0
愛を知り、愛すことを知る

ゴッズ・オウン・カントリー=神の恵みの地

イギリス・ヨークシャーを舞台に1人の男の愛と成長の物語。この映画2人の愛の物語というより、ジョニーのお話だと思う。

【色んなことがリアル】
牧場仕事のリアル。知らないふりをしているだけで、実際は出産のために動物の中に手を入れることも、殺すことも、毛を剥ぐこともある。生々しさに目を背けたくなるのを我慢して、これが現実逃げちゃダメだと身が引き締まった。

男の性。男同士の綺麗な性は慣れてるけど、獣じみたセックスは苦手だ。段々愛のあるセックスに変わるけど、モザイクなのはなんか残念。生々しさがこの映画の売りだと思うので、そこは隠す必要なかったかな。

【一人の男が愛を知る】
牧場の手伝いをするジョニーは同世代の楽しい大学生活と自分の孤独で疎外された生活の差にクソッタレと思っている。酒と行きずりのセックスで日々の鬱憤を晴らさないとやってられない。

最初に抱く冷たい、怖いイメージのジョニーがゲオルゲと出会ったことで、徐々に変化するところが見所。

表情から相手を窺っている。うっとりしている。優しい笑みを浮かべる。色んな今までになかった顔が見える。男らしかったジョニーが段々乙女になって最後には可愛いとさえ思える。心を許せる相手の前ではこんなにも人は違って見える。

ゲオルゲの優しさに触れてジョニーの家族への接し方も変わった。

最後に頑張ったジョニー。あんなに最初男らしかったこの男があんなことを言えるまで自分をさらけ出せたことにニマニマ(*´ω`*)

誰かに愛してもらうには自分から愛さないといけないと思っているが、愛されることを知らないと愛すことは出来ないと思った。

愛を知った者はなりふりなんて構ってられない。話の流れはBLでよくあるパターン。ただ音楽や台詞が少なく、目の動き、指の動作1つなど、気持ちを感じるとる映画だった。尺の割に長く感じるけど、全然眠くならない。枯渇した心が潤されていく様に魅せられる。


余談
[ブロークバック・マウンテン]を引き合いに出すレビューが多いが、[ブロークバック・マウンテン]と似ているのは山の生活と、シャツとセーターだけ。
話は全然違い、ブローク~は同性愛者のしがらみ、ゴッズ~は愛への到達。同性愛者であることの葛藤の有無が全く違う。ゴッドは周り含めかなり寛容。
ブロークは普遍の愛を描いたのに対し、ゴッドは尖った男が丸くなっただけに過ぎない。
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