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こはくのrosechocolatのレビュー・感想・評価

こはく(2019年製作の映画)
3.1
監督の自叙伝的な要素を持つ作品。ご自身は弟・亮太に投影しているとのこと。恐らくご自身でご自身の過去を描くことは、大変つらい部分も沢山おありだったのではないかと想像する。子ども時代のノンフィクションのままだと話としては弱いので、映画としてのストーリーを整えたとのことでしたが、それでも自分の過去の負の思い出と向き合わなくてはいけない。本当はこうではないか?というところも、全部描き切る辛さに耐えかねて曖昧になってしまった、そんな部分も感じる。

あのようなラストで終わったが、それで本当に良かったのか。実は釈然としない感情もあったようにも受け取れる。好きではないけど好きと言わなくてはいけない感じだから… みたいな、思いとは裏腹の行動もあったのかもしれないですね。

父親の不在と、兄を否定したい気持ち。どちらも子ども心には重すぎるし、それを抱えたまま大人になっても完全に消えたとも思えないのです。別の結末があってもおかしくはなかったのでは?とこちらが考えてしまうような、お話自体が終始曖昧に感じられてしまったのです。画質処理が終始コントラスト薄めの感じなのもその影響なのでしょうか。白日夢のようなぼんやりとした、おとぎ話のようにぼかした雰囲気なのです。

上映後に舞台挨拶つき。
井浦新さんは出演作の選定にはポリシーがあるように感じます。ご自身で完全に納得いくものをお選びのように思う。大橋彰さん、役者としての一面はメディアではあまりお見かけしなかっただけに、きちんと演じられている姿は頼もしく思えました。
お2人としても、最初の脚本を読んで、監督と「これでいいのか?」と何度も話されたそうで、それだけ自叙伝を描くことの辛さが伝わってくる。その分、お2人とも作品に対しての想いが深くなっていらしたようでした。なので私も珍しく長く書いてみました。
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