ちっちゃなきょゥじん

カツベン!のちっちゃなきょゥじんのネタバレレビュー・内容・結末

カツベン!(2019年製作の映画)
4.6

このレビューはネタバレを含みます

周防版ニュー・シネマ・パラダイス

公開日翌日に観ました。
「シコふんじゃった。」や「Shall we ダンス?」は好きだけど、周防フリークではないので、正直あまり期待していませんでした。
ですが、予想以上に楽しく、映画が終わっちゃうのが残念なくらい、ずっと観ていたい作品でした。

感想を以下の4点に分けて書きます。
1. 映画についての映画
2. 黒島結菜の輝き
3. 成田凌のカツベン
4. 周防組の活躍

1. 映画についての映画
主人公の俊太郎(成田凌)は、タイトル通り活弁士。
騙されて窃盗団の片棒を担がされるも、活弁士で人を楽しませることに貪欲。
偶然手にした大金にもあまり興味を示さず、苦境の映画小屋に就職。
実力も試されず、雑用係に甘んじても、映画感を楽しみ、腐らない。
代役で活弁するチャンスを得ると、実力を発揮し人気者に。
個人的に好きだったのは、何度も観ている活動写真のはずなのに、俊太郎の活弁に涙する館主(竹中直人)と映写技師(成河)。
日々映画に触れていても、決して不感症にならず、活弁士の語りに惹き込まれる。
映写技師が編集の切れ端を、宝物と嬉々として語る姿も、映画愛に溢れてる。
映画に関する映画は、映画人にも響きやすい。
「Nuovo Cinema Paradiso (ニュー・シネマ・パラダイス)」も「The Artist (アーティスト)」も、アカデミー賞で評価された。
自分も、映画愛に溢れた時間を、堪能しました。

2. 黒島結菜の輝き
自分も男なんで、初恋の想い出は美しく、再会するヒロインも美しくあってほしい。
その意味で、梅子の少女時代を演じた藤田りんかは完璧。
今後の活躍が楽しみ。
成長した梅子を演じた黒島結菜も、キラッキラッでした。
彼女を最初に観た「アオイホノオ」の津田ヒロミでは、あまりの可憐さにキュンキュンでした。
「ごめんね青春!」で転校しちゃう中井貴子も、「一番電車が走った」の運転少女も、「いだてん」のおてんば富江も、めっちゃ良かった。
何より「アシガール」の熱血ヒロインには打たれました。
とんでも何ちゃってSFだけど、ヒロインの
と、単なるファン目線かもしれませんが、本作の黒島結菜さんも、理想的なヒロインでした。

3. 成田凌のカツベン
男なんで、成田さんにはあまり思い入れがありません。
何なら、まことしやかな女性遍歴の噂に、嫉妬してたりします。
ただ、そんな雑念とは無関係に、本作での活弁には聴き応えがありました。
本職の方のパフォーマンスにあまり触れたことがないので、相対的な評価はできないけど、活動映画好きの新人活弁士の到達点としては十分リアリティを感じました。
彼の活弁力があってこその作品。
周防監督が褒めているとおり、大役を十二分に果たしていました。

4. 周防組の活躍
一連の周防コメディには欠かせない面々の活躍も、嬉しかったです。
館主夫婦は「Shall we ダンス?」でもパートナーだった、竹中直人と渡辺えり。
竹中さんは、いつも程やり過ぎていなかったけど、「月夜の蟹」リスナーとしては、元気な姿を観られるだけで嬉しいです。
野田MAP「Q:A Night At The Kabuki」の二役変化ぶりも圧巻でした。
えりさんは、登場時間こそ控えめでしたが、終盤の大立ち回りが愉しい。
徳井優さんのダメっぷりも好演でした。
それ以外にも、脇役の豪華キャストぶりに、周防作品の人気を伺えました。

と、周防フリークでないと言いながら、やっぱ周防喜劇のファンみたいです。
寡作の監督ですが、社会派の作品もいいけど、やっぱまた青春コメディが観たいです。