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カツベン!のmiumiuのレビュー・感想・評価

カツベン!(2019年製作の映画)
3.6
周防正行監督作品。
大正時代が舞台、サイレント映画に場面説明と声のアテレコをする日本映画界ならではの仕事「活動弁士」の世界を描いたコメディ。
弁士に憧れる若き主人公のサクセスストーリー? でもある。

役者がまさに適材適所といった感じ。
主演の成田凌くんとヒロインの黒島結菜ちゃんがイイ意味でちょっと前の時代にハマる顔立ち。
弁士役の皆様の演技や声色も楽しいし 、コメディらしいやりすぎな悪役が出てくるのも楽しい。
活動写真を上映する小屋で働く仲間たちのお仕事映画でもあり、フィルムを手動で回すのとか、観ていてレトロで楽しい。
そしてモノクロの活動写真内のキャストも豪華。(絶対全部は追いきれてないわ、と思ってひさびさに邦画でパンフレット買ってしまった。)
笑いのためにややご都合主義な演出に走っている部分が気になったけれど、全編に渡ってクスクス笑える。

コメディでももうちょっとテーマ性のある内容の方が自分好みなんだけど。
あえて難しくせず、全年齢で楽しめる映画愛に満ちたコメディにしたのかな、という感じ。
そんな中で泣いちゃったのは、七色の声を持つ元売れっ子弁士、今は酒浸りの落ちぶれた弁士役の永瀬正敏さんの演技。
売れっ子時代のキレの良さと落ちぶれてからの落差とか、弁士の仕事に乗り気しなくなった理由が
「活動写真は映像だけで充分完成している、説明は不要」
なところとか。(正論すぎ、的を射すぎだろ…)
人によってはまったく泣かない、むしろ笑うかもしれないところで泣いてしまったよ。


お気に入りのフィルムの切れ端を集めるエピソードやつぎはぎフィルムなど、『ニューシネマパラダイス』を思わせる部分もあり、映画好きなら観て損はない作品。
大正レトロな衣装や美術も楽しかったな!
そして弁士の仕事って、数こそ少ないけど完全になくなったわけではないんだよね、確か。これを機に生で観てみたい、聴いてみたいと思った。
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