ダンクシー

来るのダンクシーのレビュー・感想・評価

来る(2018年製作の映画)
2.9
「秀樹の葬儀の時、秀樹の母は私をなじった。夫が死んで涙一つ流さないのか?悲しくないのかと。私は言い返さなかった。その通りだったから。私は秀樹が死んでくれて、嬉しかった」

中島哲也らしさ全開。オープニングからフルアクセルで飛ばしてましたねぇ。
松たか子、小松菜奈、妻夫木聡と過去作のキャラを演じた俳優陣が連なる。それなりに楽しめはしました。

でも、やっぱり中島哲也はホラーを撮るのは向いてないと思う。普通の映画を作りたくない、独自性のある映画を撮りたいって魂胆は分かるんだけど、毎回それをやりすぎて上手く描けていないことが多いと思う。特に今作はそれが酷く見受けられた印象。
中島哲也のバイオレンス表現・描写はめっちゃ好きだし、今回も楽しめたけど、あまりにも過剰過ぎる演出が、逃げのように感じた。一族の悪しき風習とかモラハラ男とか我慢し続ける女とか不倫とか不妊とか育児に厳しい社会とかあらゆる負のテーマをまとめて描いていたのに、それらはガワだけであって、根幹となるそれらのテーマから現れる呪い、連鎖していく呪いって言うのが全く描ききれていなかった。いわば映画作りの一環として盛り上げるためだけの要素で使っていた。
まとめる事と、テーマに対するアンサーを出すことを誤魔化すどころか完全に放棄してしまったからこうなったんだよ…。

あと柴田理恵に関しては、完全に笑わせに来てるでしょ笑 キャラが強いのはインパクト残るしいいんだけど、背中に刺青入ってるのはやりすぎだし"はぁ?"ってなったなぁ。いやあんなん笑うけどね?

序盤に大敗する小松菜奈、彼女よりも強いはずなのに簡単にやられる柴田理恵から敵の強さを知り、終盤一気に集おうとする各地方の選りすぐりの霊媒師たち。終盤のお祓いに向けての儀式的なモノだけど、なんかゴチャゴチャしまくってて、色んな宗教?のやり方でそれぞれが行うっていう感じ、イロモノとしては全然ありだし面白いけど、やっぱナンダコレ…って冷めちゃったなぁ。もっとまとまったカッコイイ儀式を見たかった。それで言うと"女神の継承"とか"哭声"とかの方がよっぽど見応えあったし面白かったわ。
あと、全員雑に処理されすぎ!!何で頑張ったのかとかどう戦ったのかとかが全く描かれずに勝手に死んでくから、中島哲也はとにかく儀式だけやりたかったんやろうけど、その後の事もしっかり考えて欲しかったなぁ。。
全員あまりにもあっさりやられすぎじゃない??ワクワク感を返して欲しい。小松菜奈、JK祈祷師、松たか子らの発言から"あれ"が来るのが分かる時の開戦の雰囲気、何が起こるか分からない緊張感と興奮、これら全ての期待に見事に応えてくれなかった。
結局、自分で処理出来なくなっちゃったんだろうなぁ。だからこんな投げやりな作品になってしまったのだと思う。あーあー
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