回想シーンでご飯3杯いける

半世界の回想シーンでご飯3杯いけるのレビュー・感想・評価

半世界(2018年製作の映画)
4.0
公開されていた事も知らず、あまり期待していなかったからなのか、実際に観た後の満足感はかなり高い。いやー、こんな素晴らしい映画があったなんて。

稲垣吾郎演じる炭焼き職人を始めとする高校時代の同級生3人組が、地元の漁村で久々に集まり、中年になった今の「世界」の距離に悩み、ぶつかり合う物語。

「半世界」というタイトルは色んな解釈ができるし、観る人の年齢によっても感じ方が変わってきそう。それは逆に言えば明からさまな主人公を置かない群像劇として成功している証拠でもあると思う。

主演が元SMAPという事で、どうしても僕のような中年男にはアピールし難く、だからレビュー数も少ないのだろう。しかし、実際は稲垣と同世代の中年男性こそが観るべき骨太な家族ドラマであり、親子3世代に渡る男の挫折や自立が見事に描かれている。

そして稲垣の妻を演じる池脇千鶴の凄さの特筆ものだ。この人が画面に出てくると作品の世界が一気に豊かになる。笑いあり、涙ありのスタイルは、まだ30代でありながら早くも樹木希林を彷彿とさせる。

その池脇や、渋川清彦、石橋蓮司による笑いの要素と、長谷川博己のアクションシーンが作品のエンタメ性を高めており、韓国映画辺りの勢いをしっかり踏まえながら作られているように思う。脚本も阪本順治監督自らによるもので、スタッフとキャストの熱量を感じさせる力作だ。

※コメント欄に結末に関するレビューを書いています。