他人の閉ざされた心の内を無理にこじ開けようとせず、他人にも自分とは違う別の世界があるんだと、それを分かち合うような監督の優しさがにじみ出てる映画だった。
吾郎ちゃんがどう見ても外の世界を知らない田舎の人間には見えず乱暴な口調も似合わず最初は違和感ありまくりだったけど、どこかガサツで鈍くさい持ち前の?人間らしさが、不器用な父親像にしっくりくる部分があって、それはそれで愛着がわいた。池脇千鶴さんは地元に馴染んだ本当のお母ちゃんって感じのお母ちゃんをやっていてリアルだった。
40を目前にして三者三様にそれぞれ息詰まる幼馴染たち。
主人公が自分が作り続けてきた備長炭をカンカンと鳴らす音は終盤になって初めて聞く音で、金属音のように響く音が綺麗だった。彼が今まで地味な葛藤を抱え結果が出なくてもこつこつと頑張って生きてきた証のようなものを感じた。
田舎っていろいろとめんどくさいことも多いし、閉塞された地方の苦しみもにじみ出ていたけど、小野武彦さんや石橋蓮司さんらが出てくると、大鹿村騒動記のようなコミカルな人間模様が伺えて、この町の人々が微笑ましく思えた。