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ガーデンアパートのeyeのネタバレレビュー・内容・結末

ガーデンアパート(2018年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

"ガーデンアパート" (2018)

Filmgroundのメンバー
UMMMI.監督 初長編作

過去に囚われることで
京子の現実が翻弄され続け
彷徨っていく姿はまるで

"ヴェロニカ・フォスのあこがれ"(1982)
Rainer Werner Fassbinderへのオマージュ

とも考えられている
(もちろん上記作品だけではないが…)

"ガーデンアパート" では

前景的な夜の闇に煌めく白や赤
肉体の痛み・精神の痛み
絶望感や幸福感

孤独の中 もがきながら生きている

対してどこか矛盾した社会構造も描かれ

ひかりと太郎はフリーターなのに
優雅なアパートで暮らし

京子は働かないでも経済力がある

ひかりの妊娠をキッカケに
関係性が変わってしまう不条理

そこに未来への希望があるわけではない

冒頭のシークエンスでは
以下のモノローグが語られる

>愛は時間のかかる作業で、時間を短縮できず、愛の間はそれが終わることもない。愛は映画みたいなもので、政治みたいなもので、料理みたいなもので、庭みたいなものだ。一度はじまってしまったら終わるまで、それをやめることができない。

映画は77分 
愛の表現について壮大に語られる

愛を渇望するのにどこか冷淡な部分がある
大胆な行動の裏側には繊細さが映る

若きカップル ひかりと太郎
アル中気味の京子
京子の元に集まるガールズ
DJの世界

サイケデリックな映像や髪型・服装
あるいは京子の真っ赤な下着

夜の闇の中で それぞれがそれぞれの
眠らない夜を生きている

ひかりはシャワーを浴びたあとに
少しだけ眠る

一方で劇中 彼女は眠ることをやめて
彷徨い続けている

京子は一切眠らない あるいは眠らない

人間を含むあらゆる生き物は
"眠る"という行為を必要とする

夜を彷徨ったひかりが太郎と再会し
内情を吐露する後半の緊迫した場面

太郎が今後の関係について
ひかりにどうしたいか訊く

ひかりは「眠りたい」と答える

これは2人の関係を
「シャットダウンしたい」
というメタファーにも通じる

ストーリーの展開を振り返っていた時
北小路隆志 氏のコメントと洞察が鋭すぎて
ハッとさせられてしまった

京子は劇中で

>アルコールを摂取しない人間は化け物に違いない 

と話している

ヒカリは妊娠しているのもあるが
アルコールを摂取しない

世界に勧められたときも
アルコールを拒否している

つまり京子にとって表面上
ヒカリは化け物

実際 彼女は全く抑揚がなく
感情も表に出さない 明るくもない
声のトーンも一定

感情鈍麻のような状態

京子が全身で表現してる虚無感

と同様に

ひかりも圧倒的な
閉塞感・孤独感も抱えている

劇中のガールズ達も孤立してるが
それぞれが引き合いながら生きている

彼女たちも心の空虚が
とことん広がっていて

巨大なブラックホールのよう

ひかりが世界と夜を彷徨う中
世界はひかりにメッセージを伝える

>小石を池に投げると水紋ができるでしょ
その水紋が熱狂なんだって

ラストは同様の場面を体現する

しかし そこに熱狂はなく
一緒に降りたはずの太郎も映らず

誰もいない静寂な空間に1人包まれている

庭を放置し続ければ
いつのまにか雑草が生えてくる

心の雑草が生い茂っていて
ひかりの寂しさを見つめた
朗読のメッセージが壮大に語られる

妙な心のざわつきと低音の声は
いつまでも耳に残ってしまう

ひかりは観ている者に対して
一点を凝視して心を奪っていく

>私は目が醒めてもまだ心が空っぽだった。愛は何も救ってはくれず、ただただ私を不安にさせるだけだった。私はかつて持っていた朝の息づかいや呼吸の一切がどこかに行ってしまったことに気づいた。

>ここは私以外の誰もいないのだから。
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