シャチ状球体

TOURISMのシャチ状球体のレビュー・感想・評価

TOURISM(2018年製作の映画)
4.4
目的もなくシンガポールに向かう二人のあてなき旅は、無国籍感溢れる環境音楽(Vaporwave)の中での孤独な放浪へと変わっていく。

特に書くことがないと「スーを演じるSUMIREの瞳がこの映像世界に奥行きを感じさせる……」みたいな文章を書いてしまうように、二人の旅は見える物に反応し続けるだけの空虚なものだ。気の合う友達との疑似的な意識の共有によって実体のない万能感を経たニーナが、一人になって初めて"何もないことを知る"……かと思いきや、映画は意味深なナレーションと共に驚くほど普通に終わってしまう。
しかし、この"無数の何もなしの積み重ね"を繰り返しながら人間は生きている。言語として認識したものは全て自分の中に存在するのである。

観客だけが目的のない旅に出させられてしまったかのような、異国情緒とエモーショナル、そして生まれゆく自己が同居するトリップ空間。
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シャチ状球体

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