MasaichiYaguchi

ヘレディタリー/継承のMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

ヘレディタリー/継承(2018年製作の映画)
3.8
「親の因果が子に報う」ではないが、祖母の死から始まる或る一家の悲劇の連鎖を描く本作は、観る者を作品世界に取り込んで離さず、やがて終盤の怒涛の展開に巻き込んで一気に恐怖の坩堝に突き落とす。
主演のトニ・コレットというと、同様に家族をモチーフとしたホラー・ミステリー映画「シックス・センス」での母親役が思い浮かぶが、本作でもピーターとチャーリーという2人の子供の母親役ながら、全く趣きが異なる。
映画はグラハム一家の祖母の葬儀から始まるが、近親者の死でありながら不穏で不謹慎な空気が漂う。
この何とも言えない違和感、その〝訳〟や〝背景〟がストーリーと共に少しずつ炙り出されていく。
ある意味本作は、観客が登場人物達と一緒に、作品の中で徐々に濃度を増していく〝不穏な気配〟、その〝正体〟を見極める映画だと思う。
それにしても本作で巧妙に張り巡らされた伏線、謎めいた〝シンボル〟や言葉、そして登場人物の奇怪な行動やタイトルの「継承」が意味するもの、多少疑問は残しながらも一気に回収される終盤には舌を巻く。
登場人物が運命の蜘蛛の糸に絡め取られたように、観客の中には描かれた恐怖に囚われてトラウマになる人もいるかもしれない。