Ayako

追想のAyakoのネタバレレビュー・内容・結末

追想(2018年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

お気に入りの作家のイアン・マーキュアンの小説『初夜』を映画化した作品。
イアン本人も映画化の監修に関わっただけあり、彼の小説特有の繊細な登場人物の感情の機微により静かに、でも大きく動いていくストーリーがそのまま映像化された作品という感じでした。フローレンスの鮮やかなドレスのブルーと曇りがかった空のコントラストなど、英国独特の色彩の美しさも楽しめる作品。

ストーリーとしては、
保守的な60年代のイギリスを舞台に、結婚初夜を迎えた男女の心のすれ違いが、決定的な別離を呼び起こしてしまうというもの。
階級も家庭環境も異なるエドワードとフローレンス。

運命の出会いを果たし、互いに惹かれあい、結婚にまでいきついたものの、
ボタンの掛け違いから、夫婦としての歩みはたった6時間で終わりを告げ、一生離れ離れになってしまう・・・といったもの。

見てても、きちんと話合えばわかり合えただろうにと第三者の視点からは思ってしまうようなところもいくつかあったけれど、その当人たちだって、冷静になればそんなことわかるだろうに、でもその刹那に理性的になれないからこそ、悲しい結末に行き着いてしまうのよね・・・運命の相手と結ばれるかも、タイミングしだいということなのでしょうか。私たちが本能的にハッピーエンドを望むものの、見事に裏切られてしまう本作ですが、そこが、また人生の濃淡を映し出してくれていてそれはそれで好き。

こういった登場人物の心の移ろいを繊細に描くのがイアン・マーキュアンの小説の良さだなとしみじみと感じてしまいました。ラストで一人寂しく晩年を送るエドが、昔の約束を果たすために、フローレンスの最後の舞台を見に行って涙するシーンは、見ているこっちがやりきれなくなるほど切なくなるんだけど、そこも敢えて盛り上げようとせずに淡々と描いているのがさすがだなと。

しかし、この手の映画って、女性は別のパートナーがのちに見つかり、男性側は一人のままっていうパターンが多いのは何故でしょう。
Ayako

Ayako