心ならずも昔の世界に戻ると、水を得た魚のようにふるまう錦城（志村喬）。総会屋の子であることに苦しんだ娘（叶順子）が、出自で人をなじってしまう悲しさ。「真っ当」とされるやり方では生き延びられなかったであろう人間の中で、誇りと引け目が入り混じる。轟夕起子の包容力に救われる。多々良純ら、勝ち馬に乗ろうとする面々の欲も面白い。
逆光の絵が多い。日暮里諏方神社付近や柳橋でロケ。

長尺だけど面白かった。

総会屋の志村喬と嫁いだ娘の話と、銀行の乗っ取り話の二つが絡む。

経済は詳しくないけど、話が分かりやすく、財界の裏の話も面白い。臨時株主総会の場面は迫力満点で、総会屋がど何をするのかもよくわかった。

映像は、メインの登場人物の背景に、たくさんの人を収めて活気がある。冒頭、志村喬の家から帰る人から、電車にパンしながら、同時に家を訪れる叶順子を見せるシーンが良い。

親子の関係がテーマなので、片山明彦や轟夕起子など、監督の実際の家族が志村喬に寄り添っている姿には、すごくジーンとした。

川崎敬三はゲスト的な出演のみ。この監督お約束の猫も出演。

「昭和の銀幕に輝くヒロイン　叶順子」

ラピュタ阿佐ヶ谷のモーニング、叶順子の特集上映にて。

邦画としてはじめて超高感度の英国製イル・フォード・フィルムを使用、という技術的な有難みはともかくも、言われなくても画面の上質感がすごい。

手前に大きく人物を配置しつつ背景にも豊かに情報を配置し画面の奥行きを強調した構図取り、屋内の陰影の美しさ、立地や家屋構造を無駄なく利用したキャメラワーク…おもちゃ、電話、サイレンなど音による不穏の演出も印象的。

後半、満を持して「仕事」をはじめる志村喬の『レベルが違うプロフェッショナル感』が堪らない…！

堪能した。

※序盤、皆が花火を観ている座敷を臨みつつ、暗い茶室の丸窓からの逆光に切り取られる、煙草をのむ叶順子の横顔。
ぞっとするような美しさ…！