※ネタバレが含まれます。
【72分間の長回しで描いた69人が犠牲になった銃乱射テロのドキュメンタリー】
と、ドキュメンタリーと書きましたが、スタッフロールの最後に「これはドキュメンタリーではない」と監督からの但し書きがありますし、ストーリーや登場人物もあくまで生存者たちの証言を元に組み立てられたもので、正確には違うのですが。
今まで見た映画の中で、最も恐怖を覚えた作品といって間違いないと思います。
恐怖を感じる理由は一言で言えばリアルだったからです。
長回しや、銃乱射をしている犯人や撃たれる人の姿が見えないことももちろんとても大きいのですが、個人的に一番これが大きいのではと思うのが、カメラがずっと主人公といっしょに行動している仲間かのような映し方をするところです。
主人公たちが座ったらその目線の高さに、地面にはいつくばって隠れている時はやはりその目線の高さにいるので、会話こそ主人公とはしないものの、もう一人の仲間の目線のように思えてくるんですよね。
特に、頭を少し出して向こう側の様子を一瞬だけ確認するようなところはちょうど自分だったらこのタイミングで同じことをしていたろうなって時にするので、自分がそうしたかのような錯覚に陥ります。
個人的に恐怖の絶頂だったのは、部屋に立てこもり、そこから脱出して、すぐに人が倒れていた時だった。
人が倒れているということは言うまでもなく、ついさっきまでそこに銃撃犯がいた可能性があって、ということはそれこそ10メートルも離れていないところにまだいるかもしれないということになる。
その時、寒気と鳥肌と発汗と、体のこわばりを認めて、自分が強い恐怖心を覚えていることを自覚しました。
後から考えれば、結果的にはテントにこもるのがおそらく一番安全だったということになるのだろうなとは思いますが、現実にこれが起こったとしたらどうすればよいのかというのは、岡目八目でそれらしいことは言える気がするけど本当のところは分かりません。
複数犯だったら、銃声から遠くに行けば助かるとは限らないわけですし、あのボートだって運がよかっただけで、銃撃犯の仲間だったり、銃撃犯に見つかって一網打尽にされていた可能性だってあったはず。
テントだってしらみつぶしに一つ一つ調べて回られた可能性だってあったし。
結局、リスクのない行動はなくて、最も生存確率が高い行動を取り続けるしかないのはそりゃそうなんですけど、その最適な行動がなんなのかが分からない。
また、現在の状況的にこれはまったくの他人事ではないと思う、と言うのはなぜだか不謹慎に感じるが、それはなぜなんだろうか。