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映画 刀剣乱舞-継承-の都部のレビュー・感想・評価

映画 刀剣乱舞-継承-(2019年製作の映画)
3.7
刀剣乱舞に関する知識は気付くと自害を図るへし切長谷部くらいしかなかったのですが、どうやらその知識すら虚実と分かり戦々恐々でしたが、実写映画として新規層にも設定と物語の妙が呑み込みやすい語りに既存の審神者様にも目配せが効いた作品で感心させられましたね。

最近ドラえもん映画を網羅したので、刀剣男士の役割は概ねタイムパトロールと同じだなと早々に判断できたというのとあるのですが、織田信長の死を巡る騒動とその真相という題材は誰が見ても楽しめるもので、史実と世界観の重ね合わせ方が非常に巧み。

登場刀が多い為にそれぞれの描写は限られるものの、作劇上で取り上げられるドラマに無駄はなく、刀剣男士としての葛藤と忠義に対する距離感の差異で個性を補強する作りがいい。事実上の主人公とも言える三日月宗近の好々爺たる態度は色目かしく、この舞台演劇的な所作に艶を感じる演技が俳優陣に徹底されていても作品の雰囲気作りとして良い判断。

強いて不服を唱えるならば、織田信長との問答を通して"それでも歴史を守ることの意義"として語られる動機は理由付けはあるものの呑み込みにくく、彼等が命を呈して守ろうとする歴史/そして人類に関する描写が欠けているように感じるため そこでしっくりこなかったのが残念ですね。
つまり守られる存在の比喩として花があるのは分かるのですが、この物語の規模と影響力の大きさを思えば、直喩的に描写する方がこの場合は適切であると感じた次第です。

時折挟まれる特撮的な流麗な剣戟は見応えがあり、やはりここでも作品の雰囲気を損なわない──どうすれば見映えするかを念頭に置かれたカット割りや撮り方が目立ち、そうした作品に対する再現性の凝り方にも好感が持てて後味は極めて良好。
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