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家へ帰ろうのmaiのレビュー・感想・評価

家へ帰ろう(2017年製作の映画)
3.7
おじいちゃんの語りにずっと耳を傾けたくなりました。

頑固だしめんどくさい一面もあるけれど、おじいちゃんの中には曲がらない気持ちがあって、そこに理解を示してくれる協力者の人たちが悉く優しい。
話としては、ナチスから亡命したおじいちゃんを介抱してくれた恩人に、自分が最後に仕立てた服(型は恩人が作ってくれた)を送り届けるという話です。
おじいちゃんの旅の話なのですが、それ以上のものがありました。まず、歴史の面からいうとやっぱり抵抗はあるのだなと。この構図はドイツだけに限らず、日本とかにも当てはめられますよね、もちろん戦争に参加した国全部。そういう点で、駅のシーンは凄く印象的でした。おじいちゃんが頑なになってる様子を見てる人達は笑うんですよね、なんかその様子が「え?そんなことで?」みたいな軽んじてる雰囲気で…でもおじいちゃんにとってはとても大事なことだし、経験した人にしかわからない感情は絶対にあります。文化人類学者の人も、最初は「過去のこと」と謝る態度は見せていましたが、そうではないことを察します。おじいちゃんは謝って欲しいわけでもなんでもなく、経験が全てなのです。最終的にドイツの地を歩いたように、おじいちゃんも本当は今のドイツやドイツ人を恨んでも仕方がないことをわかってるのだと思います、でも経験と感情は許せないままで…そんな姿が妙にリアルで…。

最初はおじいちゃんがどうしてポーランドに行こうとしてるのかが曖昧だったので、ただのロードムービーかなぁと思ってたのですが、旅を続けるうちにおじいちゃんの過去が明かされていきます…彼がどんな思いで今までの人生を過ごしてきたのか、どんな思いを抱えているのか…目立つシーンはないけれど、静かに心揺さぶられます。
終わってみると、もう?というくらいあっという間に感じて…また最初から見返したくなりました。
素敵な映画です。
mai

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