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ライトハウスのambiorixのレビュー・感想・評価

ライトハウス(2019年製作の映画)
3.6
時代や地名が特定できるものをすべてはぎ取って抽象化したある種の神話的・寓話的な舞台装置だったり、荒涼とした自然の無慈悲な感じだったり、テイストとしてはタル・ベーラの映画に近いのかなと思った。何より画面がモノクロだしね。主人公を取り巻く環境がしだいに牙をむき始め、ついには手に負えなくなる…なんという語り口は同じ監督の『ニーチェの馬』なんかにも似てる。もちろんタル・ベーラっぽい、ってことはこの物語を画面に映ってる通り受け取っちゃあいけない、ということともイコールなわけで、監督のロバート・エガースは、一義的に解釈できるようなわかりやすい答えの提示を頑なに避けている。観客は作中に頻出するモチーフや登場人物のセリフの意味をおのおので読み替えて自分なりの解釈を出さなくてはならず、これが難しいし面倒くさい。唯一間違いないのは、ラストのシーケンスがプロメテウス神話のメタファーである、ということだけ。だいいち、主人公のイーフレイム・ウィンズロー(ロバート・パティンソン)からして近年まれに見るいわゆる「信頼できない語り手」なので、どこからがマジでどこまでがマジじゃないのかの線引きがすごく曖昧なのね。彼はどの段階で狂い始めたのか。トーマス・ウェイク(ウィレム・デフォー)老人にいじめられてから?嵐の晩から?それとも酒浸りになってから?あるいは本編まるごと彼の妄想=神話だったのか?そのへんがまったくわからない。そもそもトム老人の存在も怪しいもんで、ことによると『ファイトクラブ』に出てくるタイラー・ダーデンのように、自分の思い描いた別人格を投影したものなのかもしれない(いちおうこの説は作中でも示唆されます)。てな感じで、本編を何度も何度も見て考察を深めて自分オリジナルの答えにたどり着く…みたいな楽しみ方をする作品なんだろうけど、俺は一度でいいや😩
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