コマミー

シシリアン・ゴースト・ストーリーのコマミーのレビュー・感想・評価

4.8
【凄惨な事件を美化する】

これは……素晴らしいラブストーリーに出会いました!

初めて、[「こんなアレンジがあったのか!」]と心から感じる事が出来た作品だった。

物語の元になったのは、1993年に[イタリア・シチリア島]で起きた、[誘拐事件]である。実はこの事件、結構[残虐な]事件なのだが、そんなこの事件を映画として[どう映すか]によって、作品の質も変わってくる。
この作品はというと、美しい要素ももちろん入っているのだが、同時に凄惨さをあえて[隠していない]のが良かった。

[お伽噺]のように、少女と少年が魔法で、深い深い森に紛れ込むように、二人の関係の[距離感]も伝わってきてもいた。離れていても、[夢の中]ででも、好きな少年を救うために、[周りからの圧]を潜り抜けながら、手がかりを探す、そんな少女の[健気さ]が、物語を和らげていたし、同時に観客の心を[揺れ動かせていた]。

そして、少年のシーン。中でもあのシーン…。あれは残虐さというよりも、[虚しさ]を感じさせてならなかった。今でもあのシーンは、僕の心に[深い余韻]をのこしている。

静かに時が過ぎるこの作品だが、それはこの事件がいかに衝撃的な事件であっても、当時のニュースを観ていた観客に[そのままの衝撃]を感じさせず、一つの二人の[闘い]として映したかったのだと思う。


それを教訓に、[大切な命を失ってはならない]という[警鐘]として、全ての大人たちの[心の中]に刻ませたのかもしれない…。


いろいろと、考えたくなる作品でした。
コマミー

コマミー