theocats

チャンブラにてのtheocatsのレビュー・感想・評価

チャンブラにて(2017年製作の映画)
3.5
伊スラム街、ロマと黒人の格差、少年の成長

「朱に交われば赤くなる」ように、親や周囲がそうなら犯罪でしか生活資を稼ぐ術を知らないジプシー(ロマ)の少年。
父親と兄が警察に拘留され、金を稼ぐ役目が一気に少年にのしかかる。
がむしゃら闇雲にできること(泥棒→換金)にまい進するが、同じスラム街に住むこれまた怪しい稼業の黒人青年と知り合い、陽気な黒人仲間と触れ合うことで何かが少年のうちに芽生える。
しかし、単独でよりによってロマのチンピラ頭の家に盗みに入るというとんでもないポカミスを犯してしまう少年。
命は助かったが、チンピラ頭に吹っかけられた賠償金を支払うために少年の兄(出所済み)は黒人青年の倉庫から洗いざらい物品を盗もうと企て、少年に黒人青年を足止めするよう強要する・・・・


実際のジプシー・ロマの人達の暮らしが盗みのみで成り立っているわけではないだろうが、ロマと黒人のみのスラム街がイタリアに実際にあるものなのか?という好奇心は尽きなかった。
ショッキングなのは中坊位の少年はもとより、小学校3.4年位の児童たちもぷかぷかタバコをふかしていた場面。これまた本当にそうなのか分からないが、実際に日常的なこととするなら想像しただけで絶望的な気分に陥る。体全体の成長にも脳の健康にも致命的なダメージだな・・と。

ラストクライマックスにおける黒人青年を裏切る少年の良心の痛みはこちらもよく共感できる場面だったが、結局は「蛇の道は蛇」にならざるをえず(そうしなきゃ家族からもロマコミュニティからも見放されるしかないだろうから)。安易な「救い」的シナリオではない「悪への埋没→大人への階段」というエンディングがヒリヒリした後味を残す。

見て面白い映画では決してないが、下層社会の現実的側面を覗き見したい気分の時にはいいかもしれない。

3.6の四つ星
002107
theocats

theocats