梅ちゃん

騙し絵の牙の梅ちゃんのレビュー・感想・評価

騙し絵の牙(2021年製作の映画)
3.8
社長逝去に伴う派閥争いが激化する出版社を舞台に、豪華キャストの演じる曲者達の駆け引き、騙し合いが楽しめる作品。

ここ十数年、ネット通販の成長や電子書籍の台頭、物流の変化など、構造改革著しい出版業界の仕組みが解るお仕事ムービー的な側面からも見られる。ただし、予告での『あなたは騙される』『衝撃のラスト15分』等の煽り、自分はしっくり来ませんでした。

しがらみの中を比類なき実務能力で飄々と泳ぎきる編集長速水は、演じる大泉洋のキャラクターも相まって、会社員なら憧れない人はいないのではないかと思うほど魅力的。ラストの屋上で一人、感情を露わにするシーンも人物像に厚みが感じられて実に良かった。

また、編集長の速水に振り回される新人編集者高野の『本』に対する情熱と矜持も素敵。且つ物語の着地点も素晴らしかった。芸達者の松岡茉優さん、『お前誰だよ!!』は痛快でした。

人は誰しも2つ以上の顔を持っていると思います。自分も、速水ほどの切れ味とまでは言いませんが、いざという時に大切なものを守るための牙は備えておきたいものです。