さよこ

騙し絵の牙のさよこのレビュー・感想・評価

騙し絵の牙(2021年製作の映画)
4.8
【出演者全員がハマり役】

とある出版社でバチバチの社内政治争いが繰り広げられる話。

すっごい面白かった!異常なまでにテンポが良く、大どんでん返しが続く脚本も、語られない演出も好き!出演者全員ハマり役で最高✨

■大泉洋(キレ者)
主演の大泉洋さんの掴みどころのない雰囲気&言葉巧みに周りの人を巻き込んでいく様子が超絶格好良かった。大泉洋作品で1番好きかも。こういう頭キレキレの役たくさんやってほしいと思った。のらりくらりしているようで実はキレ者で野心家なところ、特に野心家の顔が見えたときはゾクリとしたよ。好き。

■松岡 茉優(新人編集者)
彼女の演技で好きなところは、どこか狂気じみた怖さがベースにあるところ。今回の役はキレ者の編集長に巻き込まれて振り回されることが大半なんだけど、随所に彼女の''本気''がチラ見えされるのがすごく良くて、編集長に巻き込まれてるうちに触発された変化というより、もともとあったクレイジーな部分が開放された''本気''というか、そういう凄みがあった。これは演技に取り憑かれた彼女にしか出せない見せ方だと思う。

■木村佳乃(バリキャリ)
登場シーンは大泉洋たちに比べてそこまで多くないものの、彼女の立ち振るまいから「これまでの描かれていないキャリア」がなんなく想像がついて、思わず応援したくなった。誰かさんみたいに背負ってるものを受け流すズルさを身につけてもいいんだよと声をかけたくなった。ストーリーが進むにつれて彼女の''武装''が解かれていくように見えて、演技のグラデーションが凄いと思った。

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あとメインストリーが出版社で起こるバチバチの社内政治なのに対して、「町の本屋さん」が実家として登場するの凄いコントラストが効いてて良い配置だと思った。

本を好きになってほしい、
本と出会うきっかけになってほしい、
そのために利益度外視でお客さんのリクエスト本を別の本屋さんで探したり。

社内政治とは無縁の「優しさ(≒自己犠牲)」だけで成り立っている空間が「経営」とは真逆の価値観を表していて良かった。

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映画内で出てくる本のタイトル『バイバイを言うとちょっと死ぬ』、メンヘラっぽい恋心を連想させて最高に好き。

※ときどきテンポが早すぎて情緒が追いつかなかったので-0.2しました。
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