椎蕈

若おかみは小学生!の椎蕈のネタバレレビュー・内容・結末

若おかみは小学生!(2018年製作の映画)
4.9

このレビューはネタバレを含みます

可愛い絵柄だけど結構ハードな設定とストーリー。
なんとなく始めた若女将だったけど、人との出会いを通じてやり甲斐を見出していくおっこの成長物語。
過去に何かを抱えている人ばかり出てくるけど、そのおかげでダレる事なく話が進んでいく。
TV版とはキャストもスタッフも全く違う別物らしい。

終盤の両親が出てくるシーンがヤバかった。
事故に遭ってからも、両親は約1年の間おっこの前に姿を見せてたから「両親は生きてる」って信じ続けてたと思うと涙が出てきた。
ずっと生きてるように振る舞ってきた父親が「ごめんな、側に居てやれなくて」って言うのもしんどかった。

両親が亡くなった時や、事故を思い出した時にも涙を流さず、真実を聞いた時に両親の死を受け入れて、初めて涙を流したのが秀逸だった。
おっこの感情の描き方がめちゃくちゃ上手い。
プリンを食べてたのが鈴鬼だと分かった時に少し落ち込んでたから、両親の死を頭では理解してても受け入れてなかったんだと思う。
だからあんなに辛い事があっても、おっこ自身は泣かずに周りだけ泣いてた描写があったことに納得が行く。

「私を1人にしないで」ってなったところにグローリーが来るのもめちゃくちゃ好き。
おっこに励まされたグローリーが今度はおっこを励ますのがすごく良い。
普通ならお婆ちゃんが助けるような場面なのに、数日一緒にいただけのグローリーが助けてくれるのが好き。

その後両親を死なせてしまった運転手が「勘弁してくれ」とか「俺が辛ぇんだよ」っておっこから逃げようとしたのはちょっとモヤモヤするけど、「花の屋温泉はみんなを受け入れる」って発言を回収したのが綺麗だったし、若女将として成長した姿が良かった。
雑誌に花の屋が掲載された時に「おっことしてしか紹介されてない」って何気ない発言が伏線なのも細かい。

ウリ坊と美陽が消えるところがあっさり過ぎてびっくりしたけど、またおっこが泣いても御涙頂戴過ぎて冷めるだろうから、あれくらいがベストだったと思う。
最後に花の雨を降らせて終わるのが良い。
ラストシーンで母親が「おっこが踊る姿を見たい」って言ってたのを回収したのも綺麗。

時間が短いから仕方ないとはいえウリ坊が花の屋に拘る理由が弱いと思ったし、おっこの両親を死なせてしまった運転手にはもう少しおっこと向き合って欲しかったけど、それ以上に大好きな作品。
声優じゃないキャストも上手くて違和感がない。
特にグローリー役のホラン千秋さんが凄い。

子供向け作品ではあるけど、大人が見ても楽しめるような丁寧な描写と構成に引き込まれた。
分かりやすいストーリーだけど一切手を抜いてない。
両親の死を受け入れるまでの過程、真月とのぶつかり合いと和解、若女将としての成長。
1時間半の間に詰め込まれていたけど、矛盾や無駄も無くて上手くまとめられてたと思う。

不純なものが無い純粋な作品。
自分はガッツリ大人向けな作品よりも、大人が見ても楽しめるような子供向け作品、ファミリー向け作品が純粋な気持ちで見れて好きなんだと思う。
もちろん大人向けな難しい作品も好きだけど。
ファッションショーは見てて少し恥ずかしくなるけど、グローリーが良いキャラ過ぎたからOK。
タイトルと絵柄で判断しちゃいけない好例。
椎蕈

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