ひでやん

翔んで埼玉のひでやんのレビュー・感想・評価

翔んで埼玉(2018年製作の映画)
3.5
愛を込めて侮辱する絶妙な匙加減。

本編開始前に原作者が登場し、これは「フィクション」だと断りを入れ、さらに車のラジオから流れる「都市伝説」の話にする二重の防御。その中で「笑って許して」という力加減の攻撃をするので参った。埼玉県人は通行手形がなければ東京に出入りすらできず強制送還なんて、のっけから強烈。
   
「埼玉県人にはそこらへんの草でも食わせておけ!」

もう言いたい放題。こんな調子でディスりまくって大丈夫なのか、埼玉県人は不快にならないのだろうかと不安になったが、遠慮なく突き進んでいくので、その勇気を讃えたい。都会指数による格付けはまだいいが、サイタマラリアや埼玉ホイホイはやり過ぎ。ここまでくると笑えないレベルなんだけど笑ってしまう。

悪意がないんだよね。いや、ちょっとあるか。悪意だけで侮辱するのは笑えないが、そこに愛があれば不快にならない。迫害を受けて自分を卑下するだけなら感動はなかったが、埼玉県人が持つ郷土愛と誇りが胸を熱くさせた。実際に埼玉育ちのブラザートムと、千葉出身の麻生久美子が夫婦を演じ、埼玉と千葉で言い争うリアルさがいいね。都会指数の高いGACKTを隠れ埼玉県人にするのも良かった。茨城と群馬が巻き添えを食らったようでちょっと気の毒…。

埼玉と千葉の全面対決はどうなるのかと思ったが、有名人のカードを出し合うのには笑った。それを見ながら石川県民の自分は想像する。ダンディ坂野は…弱い、浜辺美波でダメージを与え、トドメは松井秀喜だ。そんな想像を楽しみながら、日本は平和だなとつくづく思った。領土、民族、宗教による紛争もなければ、人種差別や銃社会もない島国で、あるのはお隣さんとの郷土自慢。平和だな。

埼玉県は散々ディスられたがその結果、県のPRになったから良かったと思う。
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