海老

翔んで埼玉の海老のレビュー・感想・評価

翔んで埼玉(2018年製作の映画)
3.9
※寛大な心でお読みください※

甚だ私事ではございますが、ただいま職場は、製品のアップデート直前のニッチもサッチもいかねぇド修羅場であります。Filmarksのチェックも覚束無い現況は口惜しくも不甲斐ないばかり。
忙しいのは有難い事。分かっています。分かっていますよ。成すべき試練を仲間と越える達成感は筆舌に尽くしがたいものでありますとも。
しかし、だがしかし。たとえそれでも、途方もない疲労感に満ちた今の僕は、狂おしい程に渇望するのです。
それは甘いデザートではなく、惰眠を貪る時間でもない。極上の馬鹿映画であります。

そうだ
埼玉、行こう。

鉄道会社のコピーが京都ならば、映画配給会社のコピーは埼玉でございましょう。喧騒に摩耗した僕を癒すには、四季に色付く京都の街並みよりも、茶番に武装された熱き埼玉が良い湯加減なのでございます。

かくして訪れたるは聖地埼玉。
相見えるは関東を席巻する、
圧倒的に耽美な都市伝説。

僕はこの作品を、極めて無責任に、
諸手をあげて称賛したい。

腹の底から笑った僕の率直な感想は、まさしくそれに尽きるのでありました。

"邦画史上最大の茶番劇"の二つ名に恥じない、あまりの馬鹿馬鹿しさが何と愛おしいのか。ユーモア欠乏症の大声を恐れもしない、猛烈な偏見のパレード。無遠慮にいじり倒す郷土愛は、もはや歪んだラブレター。
埼玉県人、いやさ、埼玉賢人の生き様よ。
馬鹿だ。馬鹿すぎる。加減を知らんのか。
嗚呼、大好きだ。

そもそも、僕の血脈の深い位置に流れているのは阿呆の精神なのです。どれほど阿呆かと問われれば、"DIY"を"Diyck!!(大工!!)"の略だと思い込んでいた程には阿呆なのであります。
だからこそ、見本市と言える程に阿呆に満ち満ちた物語にシンクロ率は上昇の一途を辿るばかり。

そして、何を隠そう、この僕もまた、都会指数の低さゆえに迫害を受けた身。
愛知出身の僕に、山梨出身の妻、住まいは東京と言えど都下の調布市という半端者。都内のエリートどもに、それは様々なレッテルを貼られたものであります。

・とりあえず味噌の罪
・やたら喫茶店に行きがちの罪
・愛知なのに名古屋とか言っちゃう罪
・レゴランドの罪
・信玄餅のせいで机の上がキナコまみれの罪
・鍋にかぼちゃを入れた罪
・富士山論争がやかましい罪

ほぼ被害妄想でございますが、あえてそれを確信に変えて自虐に昇華する事で、本作の歪んだ愛情に通ずる妙味となるのでありましょう。
故に、彼ら解放戦線の闘いは最高のカタルシスであり、僕もまた、勝利の雄叫びを上げる彼らの一員でありたいと、拳を握るのです。

海へのトンネルを本気で開通しようと奮起した彼らのように、僕もまた、今この試練を仲間と共に掘削しては光を求める。

さぁ、進め。
そう仲間を鼓舞する僕の立ち姿は、気付けば彼等と同じくあのポーズ。
どうやら、まんまと日本埼玉化計画を植え付けられたみたいだ。
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