Yukenz

I AM THE BLUES アイ・アム・ザ・ブルースのYukenzのネタバレレビュー・内容・結末

3.6

このレビューはネタバレを含みます

アメリカ深南部にどっしりと根差したブルースの魂。
高齢の男女たちががピアノやギターを演奏しながらプルースの旋律に乗せ、かつて手掛けた曲のほか、刹那の思いや溢れ出す感情を即興セッションでストレートに吐き出す。彼らはブルース全盛期に活躍したミュージシャンたちらしい。本作は2015年当時、一線を引いて久しい彼らを追ったドキュメンタリー映画。

当時のミュージシャンたちが久しぶりに集まってのセッション。89歳のヨタヨタ歩きのおじいちゃんがピアノに座ったと思ったら、見事な指捌きで華麗にブルースを奏で出すので度肝を抜かれる。しかも歌声も現役かと思わせるほどの声量と張り。

ギターで陽気にブルースを弾く男が南部訛りで静かにつぶやく。「本音を言おう、楽しい話じゃない。いい時なんてほとんどない。悪い時もだ。そういうもんさ。」
そう、ブルースは日常から生まれるものなのだ。

アメリカ南部で白人が営む綿花畑の過酷な労働に耐えてきた黒人たちが、自らの苦労話を慰め明るく生きるために生み出した音楽と言われているプルース。

画面の中で男は言う。「ブルースってのはアメリカ人の心のよりどころだ。世の中にはいろんな音楽が存在するがブルースには物語があり人の心を打つ」

セッション会場では彼らの若かりし日の写真などが並んでいる。
ミュージシャンには引退がないと言いながらブルースの未来を危惧する。「ブルースマンたちが順番にあの世に行き、みんな死んだらブルースも忘れ去られる。ブルースという音楽自体が、最後にブルースを歌う老人が目を閉じた時に終わるんだ」

「今強く願っていることは誰かがブルースを真剣に学び継承してくれることだ。アメリカにとってブルースとは何であるかを理解してほしい」

時折挿入される、老人たちの演奏を真剣に見つめる少年の眼差しと、一人ギター弾きに励む彼の姿が印象的だった。
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