もの語りたがり屋

ワンダーランド北朝鮮のもの語りたがり屋のレビュー・感想・評価

ワンダーランド北朝鮮(2016年製作の映画)
2.6
「私はジャーナリストではなく、映画監督だ」

という言葉が強く印象に残っている、監督来日トークイベント付き試写会で一足先に観させてもらった。

近年報じられない日はないほどのお騒がせの国、北朝鮮。その国という面としての印象だけが先行する北朝鮮の実態に迫るべく、一般の人々の普通の生活を映した作品。

率直な感想は、金一族の崇拝を除いては、まぁ世界広しと言えど、宗教政治経済の差はあれど、どこも人間の暮らしというものは同じようなもので、生きていくために働くし食べるために工夫するし、それを超えて夢も持つし、国(政治)同士の争いとは関係なく人々は仲良くしたいと願うし、想定内ではあった。もっとディープで泥くさくギリギリの内容を期待しただけに少し物足りなかったが、表題の監督の言葉に救われた。
隠し撮りという手法もできたしもっと核心に迫る取材はできたかもしれないが、それは記者やジャーナリストの仕事であって、映画監督としてこういう当たり前の生活もあるというひとつのストーリーを魅せることが役目だと思った。それをどう受け止めるかは観客次第だと。
その言葉に尽きる気がする。政治的問題意識を持ち北朝鮮について知りたいと思えば、自分で調べたり、そういった文献・ソースを探れば良いのであって、我々は映画という作品の観客であって、それを受けとめてなにを感じどう動くかが問題である。
それが映画の役割であり、そういう意味で北朝鮮を色眼鏡で見ている人たちに改めて考えるきっかけを与えた本作品と監督の勇気と根気ある行動に賛美を送りたい。

しかし、北朝鮮の人たちの金一族への崇拝は日本人からすると気持ち悪いぐらい酔いしれていた。一種の宗教だ。苦笑
その思想をつくりだした政治と教育の歴史はおそろしい。金一族のお陰で生かされていると口を揃えて言う唯一の社会主義国。それも幸せのひとつの形か…