ひろぱげ

バーニング 劇場版のひろぱげのレビュー・感想・評価

バーニング 劇場版(2018年製作の映画)
4.0
僕(ジョンス)、彼女(ヘミ)、彼(ベン)の三人が、ジョンスの実家の庭でハッパ吸いながら過ごす日暮れのシーンが素晴らしすぎる。
黄昏ゆく空、上半身裸のヘミによる鳥の影絵、雁の群れ、微かに聞こえる北朝鮮の放送、風にたなびく太極旗、マイルス・デイヴィス、三人のシルエット・・・。空気感、完璧。

しかし、このシーンの後、急に安っぽいミステリーみたいになってしまって、映画の緊張の糸が切れてしまった気がする。
村上春樹はあんまり興味ないし、原作の短編「納屋を燃やす」も読んでないけど、勝手なイメージとしての「村上春樹っぽい感じ」がそこかしこにするので、(純粋なイ・チャンドンの映画を見たいと思ってたファンとしては)それもちょっとマイナスだったりするのかも。

「(パントマイムは)才能でもなんでもないのよ。そこに蜜柑が【ある】と思い込むんじゃなくて、そこに蜜柑が【ない】ことを忘れればいいのよ。」

「ある」ものと「ない」もの。
ボイルという名の猫、焼かれたビニールハウス、子供の頃落ちた井戸、そして彼女。意味深を振り撒くだけ振り撒いてそのまま放置する。「あまりに近くにいるから気づかない」だけなのか?ま、そこは嫌いじゃない。

時代的に、格差の問題とか若者の就職難とか、色々盛り込みたかったんだろうな。(「万引き家族」と同じ2018年、「パラサイト」の1年前の作品なのだ)
そこら辺も相まって、あの痛烈なラストに向かうのはちょっと短絡的にも感じるが、この監督、気取ったいけ好かない連中に鉄槌を下すのが好きみたいなので、そういう意味ではスッキリする。そういえば何かというとしょっちゅうオナニーしてるジョンス。ラストももしかするとオナニーのようなものだったのかもしれない。
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