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バーニング 劇場版のtouchのレビュー・感想・評価

バーニング 劇場版(2018年製作の映画)
4.1
"最初から いなかったかのように 消えたい"
* * *
人は音も無く炎上する
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顔、故郷、記憶…うらぶれた過去は一瞬で燃え上がり、跡形もなく消える。
あらゆるものはそこにあって、そこにない。
禅問答のような不穏な謎だけが残る。
やり場のない憤りによって視野が狭まってしまった主人公:ジョンスはひたすら走る。
皮肉にも恨めしく思っていた父親とまるで同じ
煉獄へと続く哀れな一本道を…
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村上春樹による原作の飄々とした空気感をそのままに、ミステリーとラブストーリーの要素を肉付け。
主人公:ジョンスと謎の男:ベンが"虚構と実利"の鏡像関係になっているほか、
"貧困と富裕"という韓国の現代社会に横たわる生活格差、二者を隔てる強烈な溝が浮き彫りに。
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田舎のビニールハウスを“誰からも気に留められていないもの”のメタファーとして
都市発展に取り残された田舎の閉塞感、若者のアイデンティティの危機、近者の喪失とそれに伴う焦燥を描き出す。
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謎に取り憑かれ熱に浮かされたように街を彷徨う主人公の姿は『めまい』や近作の『アンダー・ザ・シルバーレイク』を連想させる。
また、全体を通して三宅唱監督の『きみの鳥はうたえる』に近い空気を感じたが、
柄本祐&萩原聖人がドラマ版の吹き替えを担当していたと後に知り、妙に納得した。
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個人的ハイライトは言うまでもなく、沈み行く夕日にアフリカの風景を重ねて踊るシーン。
ヒロインのしなやかな肢体のシルエットが美しい。
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監督の過去作もじっくり復習したい。
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