MasaichiYaguchi

ビリーブ 未来への大逆転のMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

ビリーブ 未来への大逆転(2018年製作の映画)
4.0
フェリシティ・ジョーンズが立志伝中の人物ルース・ギンズバーグを演じた本作からは、男女平等活動家というより妻として母としての立場から社会の理不尽さを正そうとして、100%負けるとされた〈男女平等〉裁判に挑んだ信念の強さ、不負魂がその凛とした姿と共に伝わって来る。
この裁判が行われたのは僅か50年前で、当時のアメリカ社会での女性の地位や扱われ方が余りにも前時代的、保守的で驚いてしまう。
本作を通して初めてルース・ギンズバーグを知ったが、彼女は85歳の今でも現役の最高裁判事で、アメリカでは“RBG”の愛称で親しまれ、グッズまで売られているとのこと。
今では著名人であるルースの人生は決して平坦ではなく、映画では描かれなかったが、貧しいユダヤ人の家庭に生まれた彼女が名門ハーバード法科大学院に入学し、法律家を目指す道程は並大抵の努力ではなかった筈だ。
そんな努力家のルースにはマーティンという良き伴侶がいて、可愛い子供にも恵まれている。
特にアーミー・ハマー演じるマーティンが本当に素晴らしい旦那さんで、私も夫で父親という同じ立場だが、彼と比べたら恥ずかしくて穴があったら入りたくなる。
そんなおしどり夫婦が或る訴訟記録と出会ったことにより、彼らの人生やその後の社会を変える裁判となっていく。
この作品の最大の山場は終盤で繰り広げられる法廷劇だが、絶対不利な状況下、逆転する為に奮闘した彼女の姿は強い信念に溢れ、その凛とした佇まいに心打たれる。
昨年のゴールデン・グローブ授賞式でメリル・ストリープやエマ・ワトソンらの女優達が男女平等活動家を同伴して出席して話題になったが、アメリカは性差別や黒人をはじめとした有色人種への差別が未だにあって、その根深さ故にこのような作品が発表され続けているのだと思う。