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ジュディ 虹の彼方にのtakのレビュー・感想・評価

ジュディ 虹の彼方に(2019年製作の映画)
3.5
オンライン試写会にて鑑賞。

47歳で亡くなったジュディ・ガーランドの晩年を描いた作品。イギリス映画は、ロック/ポップス界のレジェンドを描いた映画が当たったので、次にジュディを選んだのだろうか。しかし、先行する映画とは違って、ジュディ・ガーランドがどんな活躍を経てこの年齢を迎えたのかがほぼ語られない。晩年にストーリーが絞られて、彼女の多忙で過酷だったスタジオ暮らしの少女時代がインサートされているだけで、それが現在のジュディに影響を及ぼしたという語り口となっている。

レニー・ゼルウィガーの熱演もあって、引き込まれる映画に仕上がっているのだが、ジュディ・ガーランドの伝記映画という面ではやや残念な印象を受けた。「オズの魔法使い」とドロシー役がいかに多くの人々に愛されたのか、「スタア誕生」でグレース・ケリーとオスカーを争って負け、その後精神的に不安定になったこと、そしてシンガーとして復活し、グラミー賞を獲得したこと。それらは語られることなしに、身も心も傷ついた歌手の最後の日々を描いた映画。劇中に出てくるけれど、「イギリス人はジュディ・ガーランドがお好き」なだけに予備知識は当然ということなのだろか。

R&Bの名曲 Come Rain Or Come Shine や For Once In My Lifeなど名曲が歌われるステージ場面は素晴らしいし、Over The Rainbow(虹の彼方に)が歌われるクライマックスは感動的。だけど、Over The Rainbow や「オズの魔法使い」のドロシー役がいかにみんなに愛されていたのかが語られずにその場面を迎えるのがなんとも惜しい。同じ伝説的な歌手を描いた映画である「エディット・ピアフ 愛の讃歌」や「ストックホルムでワルツを」は、半生の栄枯盛衰をおさえていて、サントラ盤やその歌手への興味をそそられる秀作だった。同じように音楽に若い世代が興味を感じてくれたらいいな。

最後に。同性愛の男性カップルとのエピソードが描かれたのも印象的だった。ジュディはまだ世間が性の多様性に寛容でなかった時代に理解を示してきた人でもある。その人柄がストレートに伝わるいい場面だった。LGBTのシンボルとして使われるレインボーフラッグは、2019年の紅白でMISIAが掲げたことも記憶に新しい。あの旗はジュディ・ガーランドの Over The Rainbow が由来とされていることも、この機会に是非知られて欲しい。
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