ボブおじさん

私は、マリア・カラスのボブおじさんのレビュー・感想・評価

私は、マリア・カラス(2017年製作の映画)
3.4
どの世界にも別格と言われる人物が存在する。その世界に詳しくない人でもその名と存在が知れ渡っている人のことだとすれば、〝マリア・カラス〟ほどオペラの世界で別格と呼ぶに相応しい人はいないのではないか。

音楽史に永遠に名を刻むオペラ歌手マリア・カラスを映像作家のトム・ヴォルフが3年に渡る取材でプライベートな手紙や秘蔵映像を入手し映画化した。

オペラ界での華々しい活躍を描く一方、オナシスへの熱烈なラブレターや恋のなりゆきを女友達に報告する手紙が登場し、彼女の素顔が垣間見れる。だがオナシスとの恋はジャッキーの登場で破局となり、最期は舞台への復帰を望みながら亡くなってしまう。

スキャンダルやマスコミのバッシングの中でも、自分の信念に基づき歌うことを諦めなかった。映画の中盤で歌った「カルメン」はかつての情熱と完璧主義を取り戻して圧巻。ただ単に歌が上手いだけでなく、他を寄せ付けぬ存在感が際立つ。

オペラに関心のない人でも一見の価値あり。〝世紀の歌姫〟のドラマチックな人生の知られざる一面を紐解いていく上質なドキュメンタリー映画だ。


2019年に劇場で鑑賞した映画を動画配信にて再視聴。