KentF

幸福なラザロのKentFのレビュー・感想・評価

幸福なラザロ(2018年製作の映画)
4.2
逃げた鶏と同じ。声が届かない小屋に戻されるだけ。自由を得れば過酷な現実に直面すると憐れまれながら。オープニングロール直後の暗い一軒の家周り、そこが彼らの生きる世界。
時代遅れの労働搾取。21世紀は人権の時代だ、過去から学ぼう、そんな他人事精神は作品後半で強烈に打ち砕かれる。音楽なき無慈悲な世界。何を信ずれば良いのか。

「自由」か「捨てられている」のか。不自由でも安全な世界が良いのか。
空腹で年老いた狼は路頭に迷い、被搾取者は善良な市民から騙し取り、仲介人の標的は移民にうつる。

ラザロの蘇生が世界を照らす。静かな象徴主義的傑作。
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