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COLD WAR あの歌、2つの心のくりふのレビュー・感想・評価

COLD WAR あの歌、2つの心(2018年製作の映画)
3.5
【愛に罹って】

途中までおぉ映画だ、久しぶりに本物の映画を見とるぞ!と嬉しくなったが、お話の行く末に脱力した。

この恋人たちにとって、愛とは病のようなものですね。それを治す気がなく、生きることそのものが楽しい!という境涯を知らないのでしょう。その点、全く共感できなかった。

最後の思わせぶりな“飲む”行為もヤだね。命を舐めるな。

ヨアンナ・クーリグ演じるヒロインは、天然型肉食系のファム・ファタール。欲望実現を最大化しようとする戦略はなく、本能で動き、破滅型だが魅力的。

でも、顔面騎乗一回くらいしてもらっていいかな?とは思うが、人生捧げようとまでは思えない女だった。だからほっとけよ、と思うのに、主人公は結局、振り回される定番展開に陥る。

てか二人とも、これほど他者に依存する人生って楽しいのか?私の価値観では理解できないし、したいとも思わない。

ラストの絵面から連想したのは、グリーナウェイの『ZOO』、アホな末路。何でも、監督の両親がこんな感じだったとか。その思い入れは理解できなくもないが、映画としてみていて、面白くはない。

モノクロ映像は精緻で静謐、本当に美しい。どこかで、モノクロはカラーより美しさで劣る、という感想を読んだが、それは自分の色や光に対する想像力が薄いだけだと思います。

本作、まさに映画の色があった。あと、音楽が魅力的な大柱になっていた。ポーランドの歴史と絡めると、音楽映画としてそれなりに、立体的に感じられる。

ヒロイン初めに歌うのが、『陽気な連中』という、ソ連のミュージカル・コメディの劇中歌だそうだ。歴史的にはその映画公開後、スターリンが大粛清を始めるから、彼女がうたう、歌の変遷を見てゆくと成程なあ、と思う。

特に“桂三枝のテーマ”アレンジ、これがオモロイ!歌は、ヒロインにとっては分身のようなもの、と感じました。

なくても生きられるが、ないとバランスが悪くなる。この位置づけは面白い。

所詮フィクションだし、こうした破滅型の愛に、現実離れして浸れるならよい物語なのでしょうね。私はまったくダメでしたが。

<2019.7.1記>
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