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COLD WAR あの歌、2つの心のmaiのレビュー・感想・評価

COLD WAR あの歌、2つの心(2018年製作の映画)
4.6
90分弱という映画にしてはあっさりの短さに反して、主役2人の抱える思いはとても情熱的で、時間が怒涛の速さで過ぎていくのに常にのめり込んでしまう美しい世界観でした。

冷戦によって引き裂かれてしまう運命の2人を描く作品なのですが、2人の想いは「この人しかいない」とどんどん確信的に変わっていくのに政府や国の制度はそれを許さない…でもだからこそ2人の関係性に観客側までどっぷりと浸ってしまうんです。
思い合うが故に周りを振り回してしまうし、お互いに冷たく当たってしまう(この映画に「そんな身勝手ひどい」という批判はナンセンスですね…)。自由奔放に生きるズーラと計算高いのに何故か上手くいかないヴィクトル。対照的な2人でした。

現代で作られた映画で、モノクロ映画に成功しているのは凄く珍しいと思います。この映画はうまく雰囲気を作り出すためだと思いますが、白黒だからこそより一層叙情的な世界観に落とし込めていたと思います。
そしてジャズやクラシック、民族音楽などの魅力的な音楽の数々に、どんどんと垢抜けて綺麗になっていくズーラ…ストーリーと映像以外にも完璧な要素がたくさんありました。

ラストシーン…いかようにも取れる気がします。
2人で心中するために飲んだ薬?のシーンの後なので、「死ぬ覚悟はできた」とも取れるし「新しくやり直そう」とも取れると思います。どちらで取るかによって、この映画の捉え方も変わってきそうです。どちらであろうと美しい映画には変わりないのですが…。

あの1950年代ごろの雰囲気を写し取ったかのような白黒映画…ストーリーが良いのはもちろんなのですが、それ以前に雰囲気がめちゃくちゃにタイプだったので、大満足でした。
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